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『オビ=ワン・ケノービ』と家族の形と児童文学

『オビワンケノービ』はステップファミリーの物語

 子供の頃に見た映画などを大人になって改めて見ると、違った視点や解釈ができて新しい発見があるってことありますよね。
 先日見たディスニープラスのオリジナル配信ドラマ『オビワンケノービ』はまさにそれで、スターウォーズのルークとレイアの物語は、血の繋がらない家族の話、ステップファミリーの物語だと気づいたのです。

 『オビワンケノービ』はスターウォーズのスピンオフドラマで、主人公ルークの師匠オビワンケノービの若き日の活躍を描いた作品です。ルークとレイアの兄妹は両親が死んでしまった(と本人たちは知らされている)ため、養父母にしっかりと愛情を持って育てられていて、オビワンはそれを遠くから見守り危険が及ぶと助けに来てくれる頼りになるおじさん的存在です。

 このステップファミリー、つまり血の繋がらない家族のモチーフはハリウッドのアニメや映画ではくりかえし描かれます。『怪盗グルー』でも、グルーは養護施設にいる三姉妹と家族になりましたし、Netfrixのドラマ『ストレンジャーシングス』では、エルとホッパー警部との血の繋がらない二人が父と娘になるという物語でもあります。

日本では国民的なアニメほど、ステレオタイプ?

 海外のエンタテインメント作品のすごいところは、いろいろな家族の形がある事をさらっと描くのところです。それがメインではなくて、冒険やアクションの中に、実は主人公がステップファミリーだったりシングルマザーだったりするのです。両親がいて2人の子供、のようなステレオタイプは決して描かないのです。

 それに比べて日本のアニメは、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、妖怪ウオッチ、さざえさんに、ちびまる子ちゃん。国民的アニメ作品ほど、ステレオタイプな4人家族が描かれがちです。これは、本当に刷り込みといっていいいくらいに家族の形を限定させてしまいます。子供がこれらの作品を見ていたら、そうではない家族はイレギュラー。になってしまいますよね。
 家族の形にもいろいろあるし、たとえ普通の家族の形ではなくても愛情をもった暖かい家族はたくさんあるのです。ルークやレイアのように、養父母からしっかりと愛情をそそがれる姿を描くヒーロー映画や、アニメがあってもいいと思うのです。それを普通と違うというだけで、白い目でみたり、かわいそう、という視点を子供たちにはもって欲しくないと思うのです。

海外と日本のエンタメにおける家族の描き方の大きなズレ

 その点、最近の日本の児童文学は、ステップファミリーやシングルマザーなど、いろんな形の家族を描いています。多様性を描こうと、児童文学作家の方々がいろいろな工夫をしていると感じます。先日読んだいろうみくさんの作品『あしたの幸福』も家族の形の多様性を描いていて胸が熱くなるシーンがたくさんありました。児童文学作家の方々が時代の感覚にそって、家族の形をアップデートしているといつも尊敬します。
 子供はジャンルに関係なく、映画もアニメも本も読むわけで、子供作品における、家族の形のアップデートのギャップが、海外と日本、日本でも児童文学とアニメとでは、その度合いに大きなずれが生じていると感じます。

 ルークとレイアも、養父母にしっかりと愛情を持って育てられたからこそ、その後ヒーローとして強く成長していくのです。普通と違う家族でかわいそうではなく、そこにある愛情をいかに描くかが、 子供向け作品には大事だと思うのです。親になって新しい視点で見た『オビワンケノービ』はそういう意味でも素晴らしい作品でした。


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