『なんしょんな!俺』(10)【最終回】 アニメプロデューサーを志すあなたへ / 川人憲治郎
※全て無料で読めますが、今後の活動費に当てさせて頂きますのでよろしければご購入も頂けますと嬉しいです。
歳を重ねてくると一年が短く感じますね。人は何故そう感じるか、それは大人になるに連れ日々、感動する回数が少なくなるから(一日に何回も感動がある方が一日を長く感じるそうです)という説と、単純に一年365日を年齢で割ると10歳だと一日が36.5という時間で体感するけれど、50歳だと7.3時間で体感するから、一年が早く過ぎると言う説の二つは聞いたことがあります。
思い返して見ると小さいころは日々のささいな出来事に感動していたのに、大人になると日々の生活に追われて感動することが少なくなったなと思います。だからなのか一年が早く流れて行き気がつけば年末になり、「もう年末!?今年も一年が早かったね」なんて会話をあちらこちらで聞くことに。
感動と言えば映画を観て人は感動しますよね。自分の追体験として感動する。自分が知らなかった世界観に感動する。血がいっぱい飛び散って感動する。それ以外にも作品によって観る人によって様々な感動があると思います。私の場合はキャラクター達が生きて行くことの力強さが感じられる映画には感動するタイプなので、ホラー映画にも感動します(笑)
いい映画って何かしら感動を与えてくれるものです。作り手としてはあざとく感動させてやろうとか泣かせようと思って作った映画は逆にお客さんの心に響かない気がしています。作り手が心底その作品を愛し、スタッフが一丸となって作られた映画がお客さんを感動させる。いい映画ってキャスト・制作スタッフの息吹みたいなものを感じます。
私が仕事としての青春時代を過ごしたグループ・タックが1982年に制作した「対馬丸・さようなら沖縄」は戦時中、沖縄から本土に向かく学童疎開船がアメリカ軍の魚雷によって被害を受け、大勢の子供達やお年寄りが亡くなった悲劇を描いた劇映画です。そして誰もが戦争の悲劇は二度と繰り返してはいけないんだというメッセージがずしんと心に響く映画です。グループ・タックでは普通のロードショー館で上映しない(主に地方の公共施設で上映する)「親子映画」「非劇場映画」という作品を数多く作ってしました。
この作品もそのうちの一本です。この映画では生き残った子供たちが海に漂いながらも必死に生きて行くすがたに何度見ても涙してしまいます。主役の田中真弓さんが泣きながらラストシーンのセリフを収録。その芝居に心を打たれたスタッフが取り直しなしで、そのテイクを使った話を聞きました。これもキャスト・制作スタッフの息吹を感じる映画です。
話は変わって最近バイトテロが問題になっています。先日もワイドショーが取り上げていてビックリしたのは、福岡のマンションで受水槽に入って泳いでいる輩がいました。そこに住んでいる人たちの飲み水であり生活に欠かせない水を汚すなんて気が知れませんね。彼らは馬鹿なことをやっている動画を有象無象の人たちが面白がってくれると思ってるんでしょうかね。北九州のミスドでは50代が起こした元バイトテロがあり、世代に関係なくバイトテロを起こしていることに驚愕しました。私も20代の頃は酔っぱらって植え込みに飛び込んだり、自転車置き場で自転車ドミノ倒しをやったりした経験があるので彼らのことを声を大にして非難できない過去を背負っています(汗、汗、汗)彼らは特に食に関する悪戯が多いから手に負えません。自分が不衛生にした食べ物を食べる立場で考えれば行動を抑制できいないものですかね。お手軽にネットに上げて大勢の人に自分たちの馬鹿さ加減を見てもらいたいなら、ちゃんとした場所でパフォーマンスとしてやればいいんですよ。電撃ネットワークみたいにね。
つい最近、アニメ演出家・宇井孝司さんが亡くなりました(6月5日、心筋梗塞にて永眠)。彼と私は同じ1961年生まれ。私は早生まれなので学年は私の方がひとつ上でした。グループ・タックで制作していた「ごんぎつね」の演出助手として彼が入って来たのが初めての出会いです。その後「タッチ(TV&劇場)」や「劇場版 あらしのよるに」の演出助手をやってくれて、私がグループ・タック在籍時の後期作品「親鸞さま ねがい、そして ひかり」では監督・音響監督を引き受けてくれました。そんな宇井さんが、あちら側の扉を開けて旅立ちました。あらためてご冥福をお祈りします。
グループ・タックでの出会い、その後のサテライトでの出会い、そして今のディオメディアでの出会い、いろいろな人に出会い、出会った大勢の人たちに支えられていまでもアニメ制作をやらせてもらっています。プロデューサーって、作品に愛を持ち、様々な現場で交渉にあたれる人、且つお財布の紐をしっかりと握る、ときには緩めることも必要ですが。そして何よりも出会った人たちとの繋がりを大事にすることだと思っています。
2019年5月31日に公開された「長いお別れ」(中野量太監督作品)のENDクレジットで原正人プロデューサー(1931年生まれ)のお名前を見かけました。グループ・タックで「銀河鉄道の夜」「紫式部 源氏物語」でご一緒さていただいた日本を代表する映画プロデューサーです。ご高齢ですからさすがに現場に立って指揮をしている分けではないでしょうが、私が目標とするプロデューサーのお一人です。
とは言え私もあと二年で還暦だし、この国では老後生活に年金以外で2千万円が必要なのでここで一攫千金を狙いに宝くじを大量購入してでも、そろそろ老後に備えないといけませんね(笑)
【 川人憲治郎(かわんど けんじろう) プロフィール 】
1961年4月1日生まれ。香川県丸亀市出身。
株式会社グループ・タック、株式会社サテライトなどでアニメーションプロデューサーを歴任。
ふしぎの海のナディア(1990年 - 1991年)、ヤダモン(1992年 - 1993年)、グラップラー刃牙(2001年1月 - 12月)、FAIRY TAIL(2009年 - 2013年)など、プロデュース作品多数。
現在は、株式会社ディオメディア(http://www.diomedea.co.jp)にて制作部本部長を務める。無類の愛犬家。
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