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植物の右巻き左巻き問題 なぜこんなに混乱しているんだろ?

 前回、ネジバナについての記事をUPしたときに、何をもって「右巻き」「左巻き」とするかには諸説あってややこしいと書きました。今回はそこのところを少し深掘りしてみましょうかね。

 実は前回の記事を書くときに自分でもちょっと分からなくなって、あちこち調べてみましたら、多くの方がネジバナの右巻きと左巻きについて誤った記述をしておられることが分かりました。

このネジバナは右巻き?それとも左巻き?どっちなんだーい?

 さらに他の代表的な植物の例を挙げるなら、たとえばアサガオについても「蔓は左巻きである」と書かれているものもあれば、「蔓は右巻きである」と書かれているものもあるんですよね。しかもこれが個人のブログなどならまだしも、かなり専門的なところが公式HPに書いておられる記事でも散見されるわけです。
 これは一体どういうことなんでしょうか?というわけで今回は

植物の右巻き左巻き問題はなぜこんなに混乱しているのか?

について考えてみたいと思います。

 前回の記事でも書きましたが、私自身は次の説に準拠しています。

「蔓の先端(あるいは根元)から見て、時計まわり(右回り)にたどると先に進んでいくのが右巻き、反時計まわり(左回り)に進んでいくのが左巻き」

1. そもそも以前の問題として

 でもね、蔓の先端から見ても根元側から見ても巻きの向きはホントに同じなのでしょうか?はい、大丈夫です。たとえば縄やロープを見るときに、上下をひっくり返しても同じ方向に撚られているように見えるんです。

これがその証拠。右が元画像、左が上下反転させた画像。ほら、どちらも撚りの向きは同じです。

 だから植物の蔓も上下どちらから見ても結果は同じなんです。(ココだけの話ですが、ある大学のHPのコラム欄に「螺旋の向きが逆に見えるから見る向きは大切」と書かれているのを見て、これまた問題の闇が深いと思ったのはまた別のお話。w)

2. 見分け方の練習をしてみよう

 閑話休題。わかりやすく言うなら、植物の蔓は上下どちらから見ても進行方向に向かって
 ・時計回りに巻く場合…右巻き
 ・反時計回りに巻く場合…左巻き
こう覚えるとよいかも知れませんね。では、ここからは私が畑で撮ってきたいくつかの植物で少し見分け方を練習してみましょう。

1. ヤマトイモの蔓は右巻き?それとも左巻き?
2. うずら豆の蔓は右巻き?それとも左巻き?
3. キュウリのヒゲはどっち?これちょっと難しいかも。www
4. ヘクソカズラの蔓はどうでしょうか。(^^;)

正解は

  1. ヤマトイモ…右巻き

  2. うずら豆…右巻き

  3. キュウリのヒゲ…右巻き(たぶん)

  4. ヘクソカズラ…左巻き

 どうです?易しいですよね。(^^) ではなぜ世間ではこんなにこの問題が混乱しているのでしょうか?

3. 左巻きと見るか右向きと見るか それはスタンスの違い

 実は古来から日本ではこれまで見て来た右巻きの植物を見て「左巻き」であると捉えていました。同じものを見ているのに真逆になるのはなぜなのか?それは一言でいうとスタンスの違い。要するに見る視点が違うんです。アサガオを例にそれぞれの捉え方を簡単に比較してみましょう。

古来からの日本式「左巻き」論
 アサガオは「蔓が支柱に向かって左へ左へと巻き付きながら成長していくから左巻き」と考える。つまり自分がアサガオの蔓になったとして、左へ左へと進むからこれは左巻きだという捉え方なんです。

現在主流になっている「右巻き」論
 アサガオを遠くから客観的に眺めた時に、支柱に巻きついた蔓の先端は右に向って伸びている。だから、右巻きとするのが今の考え方。こちらはアサガオを外から見て、支柱の手前に見えている蔓が右に向いているから右巻きなんです。

4. これまでの歴史的経緯

 最後にいろいろ調べて分かったこれまでの日本の右巻き左巻き問題の経緯を簡潔にまとめておきます。

  1. 日本では昔から植物の蔓は全て左巻きとされていた。全ての植物がそうではないのでこれは誤りであるが、貝原益軒もアサガオに限らず全ての植物が左巻きであると記述しており、江戸時代の日本では「植物の蔓は左巻き」が常識化していた。

  2. 牧野富太郎は大正2年出版の「植物学講義第2巻」の中で、西洋ではアサガオは右巻きとされていて、「dextrorse」の意味が右巻きという意味であることを認めながら、“日本ではこれを左巻きという意味に用いる”とした。さらに右巻きか左巻きかの簡単な見分け方として、教科書などで「支柱を右手で握った時、親指の方向につるが伸びていれば右巻き。左手で握った時、親指の方向につるが伸びていれば左巻き」と解説し、これが広く一般に普及。

  3. 1956年4月に刊行された「学術用語集植物学編」を編纂するにあたり招集された木原均先生(コムギの祖先を発見したことで著名)を中心とした編集委員会の会議の中で「植物の蔓の巻き方も工業分野のネジなどと同じにしたほうが混乱しなくて良い」という意見が出され、右巻きに訂正。

  4. これ以降、「アサガオの蔓は右巻き」という説が定着しつつあるが、子どもの頃に「アサガオは左巻きと習った」という人もまだ大勢いるため、未だに誤用がたくさんある。

 今ここです。↑

 うーん。当時、たぶん混乱を防ぐために牧野富太郎先生がされたことが、どうやら今の混乱を招いているんじゃね?と言ったら叱られそうですが。w

5. 終わりに

 さあ、如何でしたでしょうか?ややこしい問題をできるだけ易しく解説できるようにがんばってみたのですが、わかりやすかったでしょうか?
 要するにこれは何をもってどちら巻きと呼ぶかの問題なんですよね。私流に別の言い方をするなら、支柱の奥の蔓の向きを見るか、支柱の手前の蔓の向きを見るかだけの違いなのかも知れません。(^^;) 
 
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 今回の記事は以下のHPを参考にさせていただきました。詳しくお知りになりたい方は、ぜひご覧下さいませ。



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