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ともしび日記 10月12日

百葉堂の試着会、3日間のうち2日私も店頭に立って接客させていただいた。
初日は雨の中たくさんのお客さまにお運びいただき感激し、翌日も自分では考えてなかったコーディネートがあまりにもピッタリハマって感動した。
心が動きまくりの2日間。
最終日だけ出れずにとても残念だった。

お客様に直接お会いできて
百葉堂の着物を着てくださってるのを見れて

たいそう楽しかったのだが、同時に自分の店員としてのスキルの無さに気付かされてしまった。

ただあれこれ言いながらうろついているだけで
試着をお待ちの方にお着物を着付けることが出来ない。

今回は百葉堂の着付けができるスタッフ2名の他に
手練れのお二人に助っ人で入ってもらった。
着付けのできる人員4名でご対応したのだけど
それでも間に合わず、お客様をお待たせしてしまう場面が何度かあったりしてはらはらした。

着物の仕立て上がっているものは各柄ひとつ。
誰かが試着している時にご希望の方には少しお待ちいただくことになる。
そのほかにも仕立て上がりのをトルソーに着せているお着物をご希望の場合は
反物を当てて着物みたいに着付けるのだ。

この技術がすごい。
着付けもできるのだから当たり前なのかもしれないけど、ただの細長い布をインドの民族衣装、サリーのように巻き付け何箇所か紐で結んで
着物を着ているように見せてしまう。

これを反物巻き付け師と呼んで、
ただ今巻き付け師が巻き付けに参りますのでどうぞお待ちください。

とかふざけていたのだけど、私以外のスタッフ全員巻き付けられるのである。
それはどこで習うの?と聞いてみたら
着物店で働いた時に一回講習などで習うものだと
教えてくれた。

私も講習してもらって巻き付けられるようなりたい。
具体的なことが何ひとつできないのは歯痒いし
申し訳なく思ってしまう。

お客様が着たいお着物に帯を選んで差し上げたり
お見立てをして、その後は着付けが仕上がるのをただ待つばかり。

手元が暇になると
巻き付け師が巻いた後放置されて山積みとなった反物を巻く、という仕事もした。

しかしこれもスキルがいる。
賞状など紙ものをクルクル巻く要領でやると
布がねじれて綺麗に巻けない。

反物の両端を持ってクルクル勢いよく巻いていくのが1番綺麗に仕上がるのだけどなかなか難しい。
端がそろわずどんどんずれていくのだ。

難しい、と呟きながら巻いていると
スタッフの麻美さんが西陣で毎年行われる
反物巻き大会の話をしてくれた。
着物業界で働くおじさん達が一同に会して反物を巻く速さと正確さを競うらしい。

なんだその面白い大会、日本のどこかでそんな催しが行われているとは知らなかった。

確かに時代劇や昭和のドラマなどで呉服屋が舞台だと必ず番頭のおじさんが反物巻いてたけど密かに
俺は反物巻かせたらすごい早いぜ…?
みたいなことを考えていて、いつかあの三枡屋の野郎を抜いて反物巻き界の王になる!
とか思っていたのかと想像すると笑いが止まらない。

その大会は京都の老舗のおじさんが巻くというのが面白いので出ることはかなわないが
これからも試着会をやるとしたら反物は巻けたほうかいいのでコツコツと練習しようと思っている。


普通にYouTubeにありました。勝った方のおじさんが巻いた反物を勢いのまま放るの好き。

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安野モヨコ&庵野秀明夫婦のディープな日常を綴ったエッセイ漫画「監督不行届」の文章版である『還暦不行届』の、現在連載中のマンガ「後ハッピーマ…

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