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ともしび日記 7月1日

イベントもあって着物熱が高まっている。

もともと熱が高いから着物の製作にまで手を出したわけではあるが、なんと言っても本業は漫画なので
そっちが立て込んでくると着物の方の作業はぱたりとやらなくなる。

今年も本当なら梅の小紋や水仙の帯、春には桜の昼夜帯などの企画があったのに、その時期忙しくて
どれもラフスケッチだけでデザインまで辿り着けなかった。

デザイン、とひとくちに言っても
着物の場合は和のテイストに仕上げるのでいつもの感じで描くわけにもいかずなかなか難しい。
植物や小鳥など、私が普通に描くとどうにも漫画感が出てしまってダサくなる。
もっと精進が必要である。毎朝絵の練習をしている。


着物のデザインをする時は
まず全体的にこんなイメージというラフデザインをして、それから本番の絵に落とし込む。
布のサイズに合わせて描くので少し大きめだ。

その際実際のお花をそっくりそのまま描いたら
あまり可愛くならないので図案化する。
昔の図案やアンティークの着物の写真なども参考に自分で実際に描いた実物の絵から線を抽出していく。

ここが1番楽しくも難しい。
何色も色を変えてみて1番良いのに決める。
決めかねて何色も作ったりする。


それを今度はデザイン担当さんに
トルソーが着た着物の上にマッピングしてもらい
柄の配置を決めてマス見本というものを作る。

マス見本とは実際に布にプリントしたもので
画面で見ていたものを布に乗せて色の出方や柄のサイズ感などを確認するものだ。

仕上がりを見て修正したり色を変えたりして
大抵は1〜2回やり直す。
そんなマス見本がナンナントウには山のようにある。
後から見るとこれも可愛いのでは?
と、なって発売になるものもあったりするのだが
発売されるものの陰には結構な数のボツデザインや色がある。

このような過程を経て
完成したものを催事とサイトで販売している。

価格についてはいろいろ思われることもあるかもしれないけど、あれでもかなりギリギリの価格設定で
実はそこに私の画稿料は含まれていない。
自分が欲しいから描いているだけなので
そこに関しては何処からも原稿料など出ないのだ。

そんなわけで人件費などを引いたら完全に赤字であるけれど、やっぱり楽しいのでまた作る。
しかしあまりに赤字だと続けられないかもしれない。

もう少しは続けたいので、お着物好きのご友人がいる方は是非是非「百葉堂」という着物屋のことを伝えていただけたらありがたい。
長く書いておいて最後に宣伝かい!
と、思われるかもしれないが
全くもってその通りである。

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安野モヨコ&庵野秀明夫婦のディープな日常を綴ったエッセイ漫画「監督不行届」の文章版である『還暦不行届』の、現在連載中のマンガ「後ハッピーマ…

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