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昧爽刻

彼と行く夜のドライブが好きだった。

大概は唐突にメールが来て、私がゴソゴソと仕度をしている間に迎えに来てくれる。
目的地はいつも適当で、首都高をぐるぐる周りながらその場で決めた。

どこからも切り取られたようなあの時間、あの空間。

等間隔に並んだ照明灯もCGみたいな夜景も延々流れるJ-waveも

夜も

終ることが無いように思えた。
始まりすら無い気がした。

私達は、実に心地の良い停滞の中にいた。

ある日の真夜中、湾岸線をひた走り、私達は羽田空港へ行った。
夜中の空港は初めてだった。ひたすらに伽藍として広く、誰もいなかった。
「ここからみんな、旅に出るんだな」彼が言った。
それから2人でデッキへ向かった。まだ暗い夜空を見るために。

でも

「あっちから、来るね」
彼が差した方向の空は地平から微かに白く、見る間にオレンジ色を帯びた。
「夜、終わっちゃったな」

朝陽を受ける彼の横顔がまぶしくてまぶしくて。
ここから私達も旅に出るんだ。そう思った。

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