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ザリガニの鳴くところ ディーリア・オーエンズ

ジョージア州出身の動物学者である、ディーリア・オーエンズによる小説で、2019年アメリカで一番売れた本。


ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。
6歳で家族に見捨てられた時から、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。
読み書きを教えてくれた少年テイトに恋ごごろを抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。
以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、
彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。
しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…
みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。


捨てられ続け、それでも生きていく

カイヤはたった6歳で、母が去り、兄弟が去り、父親が去った家の中で、ひとりで生きて行かなくてはならなかった。
はてしのない、寂しさに耐えながら、「湿地の自然」に寂しさをうめてもらいながら、
貝を売り、トウモロコシの粉を食べて生きた。

カイヤは学校へは通わなかったが、兄の友人だったテイトに読み書きを教えてもらう。
そして、湿地の自然、生き物について学び、聡明な少女に育っていく。

しかし、カイヤにとって、穏やかな時間ばかりではなかった。
村の人からの差別。追い打ちをかけるような、さらなる孤独。かつての恋人からの暴力。

そして、「生きる」とはどういうことか、カイヤは自然の中から学ぶ。

メスの親狐は、窮地に追いやられると子供を捨てる。そして、身の安全を確保できるとまた子供を産む。
カマキリのメスは、交尾の最中にオスを食べる。
ホタルの雌はお尻の光らせ方でいとも簡単に、望みをかなえる。最初は交尾の相手を。そして、次は、自分の食事となる雄ホタルを得る。

ここには善悪の判断など無用だということを、カイヤは知っていた。そこには悪意はなく、あるのはただ拍動する命だけなのだ。
たとえ一部は犠牲になるとしても。
生物学では、善と悪は基本的に同じであり、見る角度によって替わるものだと捉えられていると。

私は、カイヤではないけれど、
絶望的な孤独に対する共感と、
聡明な女性に成長する姿を誇らしく思い、祈るような気持ちで、寄り添いながら読み進めて行った。

そして、不審死事件はどのような判決が下るのか。

「湿地の少女」カイヤの人生をこの本とともに体験してください。

#読書感想文   #ザリガニの鳴くところ #ディーリア・オーエンズ

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