キナリ杯 参加中 退屈の国
退屈の国
むかしむかし、この世の為政者たちは
ぼーっと退屈そうにしている者たちに腹を立て、この世の退屈をぜんぶひとつに詰め込んだ。
そして生まれたのが、退屈の国。
退屈の国の国民は、選ばれし退屈者たち。
選ばれし退屈者は、
やることを探したり、
何もしないことに焦ったり、
廊下を走ったり、
赤信号を無視したり、
しないのです。
だって、選ばれし退屈者は知っているの。
今は何かをやるための準備期間。
出番がなかったら?それでもいいのよ。
だって退屈の国には時間が道端の雑草のように、至る所に生えているんだもの。
わたしは、そんな退屈の国のお姫様。
退屈を愛し、退屈に愛されたお姫様。
「お姫様!お姫様に相談があるんです。」
たまに、国民から相談されることもある。
だってわたしは、退屈の国のお姫様だから。
「実は、やりたいことを見つけてしまったんです。もう退屈な毎日は送りたくありません。」
退屈の国には、選ばれし退屈者しかいられない。これは、退屈の国の退屈法できまっているから。
「なんと。それでは、そなたを退屈の国から追放する。」
退屈の国の退屈を守るために、選ばれし退屈者ではなくなった者は追放しなければならない。
「はい!お姫様、ありがとうございます。空を見上げてぼーっとしていたら、空がどこまで続いているのか、気になってしまったんです。僕は空の果てを見つけに行きます!では、お元気で!」
たまにこういう者たちが退屈の国に現れる。
わたしはそのたび、こういう者たちを追放しているのだ。
この間は、よく木の下でお昼寝をしていた、にゅートンとかいう若者を追放した。
彼は去り際、わたしにリンゴをくれた。
ともかく、これで退屈の国の退屈をまたひとつ守ったのだ。
だってわたしは、退屈の国のお姫様だから。
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