【小説】可惜夜に眠る恋人よ
可惜夜に眠る恋人よ
またか、と息を吐けるほど、人間は他人の死ぬる姿へ従順になりました。つまるところ、正方形の機械に意識を吸われている僕だけが、この世にすら取り残されておりまする。その受像機の上には蝉が裏返っていまして、微かに動いていた足も静寂となりました。陽炎が窓に密着して嗤う日盛りの二時半。葉月と三日のこと。女性アナウンサーが淡々と発する言葉には、僕と彼女の心中事件が報道されているようです。また、察するに僕らは五日間も眠りに耽っていたようでした。自ら身罷る者の多いのを由