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11月4日おしりたんてい·いいおしりの日

 おしりにお顔を描いてと、5歳の息子が言った。

 なんのことやらと思いつつも、どこかウキウキと期待感に満ちあふれている彼を目の前にして、ダメ!と言い切るのことは出来なかった。まぁやらせてみるかと、いいよと返事をすると飛び跳ねて喜ぶ。


 さすがにマジックで描くのは気が引けて、少し悩んで思い出した。ハロウィンのときのフェイスペイント用のペンがある。確かまだ少し残っていたはずだが、どうだっただろう。この間終わったばかりだからまだ押入れには入れていないはず。いや、もう夫が片付けたかも知れない。息子にはちょっと待っていてと言い、私は2階をガサゴソと探し始める。

 ハロウィングッズは大きなエコバッグにそれだけでまとめていた。そのはずだが、かぼちゃのバケツや仮装衣装は入っていても肝心のペイントペンがない。やっぱり使い切ったのだろうか。でも確か、3本で充分だったねと夫と話したので、4本買っていて少なくとも1本は残っているはず。だがしかしそこにはない。

 1階からは、まだかと言う息子の催促が何度か来ていた。ちょっと待ってーなどと少し焦りながら探していると、ふとしたときに思い出す。そうだ、ペンだけは別にしまったのだった。来年まで残しても使えるか分からないから、クリスマスに使いきってしまおうと思って1階の引き出しにある。

 そうだったそうだったと私はその場を簡単に片付け、バタバタと1階に降りる。ついさっきまで、まだかまだかと催促の声が止まなかったのに、何故だろう。とても静かである。少し嫌な予感を感じながらも、お風呂場に息子がいることを確認し、ごめんねと声をかけた。その方からガタッと音がした。

 ん?お風呂場?

「大丈夫?!」

 慌てて息子の元へ向かう。

「マ、ママ」

 もう最初から怒られると思っての声色で振り向き、私の顔を見る。すると、何かと目が合った。その視線を探すと、お風呂場の鏡にそれはいた。ルージュの伝言ならぬルージュのおしりたんていだ。

「……おしりたんてい?」

 私が確認すると怒られると思ったのか、息子からはまず、言い訳らしき言葉が出た。そう言えば最近、息子はおしりたんていの絵本をよく読んでいる。

「だって、おしりに描くためのペンが無さそうだったから」

 フェイスペイント用のペンね。おしりに描くためのペンはそもそも存在しません。ふんふん、と軽く頷きながら話を促してみる。

「だからね、鏡にお顔を描いて、そこにおしりを映したらおしりに描いたみたいになるかなと思ったんだ」

 なんと!直接おしりに顔を描くのではなく、鏡に描いてそれを使おうとしたのか!

「ママの口紅で?」

 実際は、怒るよりも息子のアイディアに感心させられていたのだが、少し意地悪く聞いてみる。するとパンツ1丁の息子は可愛い顔をして言うのだ。

「僕が大きくなってたくさん買ってあげるから」

 なるほど、さすがは探偵である。私が息子のこの甘えた笑顔に弱いことはすでに調査済みらしい。


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【今日の記念日】
11月4日 おしりたんてい·いいおしりの日

児童書、一般書など、数多くの書籍を出版する株式会社ポプラ社が制定。同社が手がけ、絵本、読み物、アニメで活躍する「おしりたんてい」は、見た目はおしりでも推理はエクセレントな名探偵。「おしりたんてい」の誕生日でもあるこの日を記念日として、さらに多くのこどもと大人にその名前と魅力を知ってもらうのが目的。日付は1104を「いい(11)おしり(04)」と読む語呂合わせから。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。


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