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7月15日 世界ありがとうの日

 今朝、まもなく3歳になる次女に、しゃがんで靴を履かせていると、上から『ありがとう』が降ってきた。

 何が起こったのか分からず、降ってきた『ありがとう』を浴びた顔の周りがきらきらと輝いたように思い、驚いて顔を上げると、娘がにこにこと笑っていた。

「ママ、靴を履かせてくれてありがとうね」

 そう言って、にこにこしたまま立ち上がり、その小さな手が私の手をとった。

「幸せの魔法なのよ」

 そう言ってまたにこりと微笑む。


 ありがとう、だなんて毎日ちょこちょこ言われているのに。この言葉一つでこんなに気分が晴れやかになるものか。そう言えば、口にした本人である次女も嬉しそうに笑っていたことを思い出す。

 それならば、と私は今日一日を決意する。

 出来る限りありがとうをたくさん言おう。

 ノルマのようにはせず、あくまで出来る限りでいい。1つでも多くのありがとうを言えるようにしたい。

 こんなことを考えながら、保育園に次女を送り出し、私は職場へ向かう電車に乗り込む。不思議なのは、まだ1つもありがとうと言っていないのに、言おうと決めた時からどこか気持ちがワクワクしているのだった。

「おはようございます」

 こちらも不思議と挨拶の声が大きくなった気がする。鏡で見れば口角も上がっているかもしれない。うん、良い一日になりそうだ。

「桜木さん、おはようございます。この書類、修正しておきました。遅くなって申し訳ございません」

 別の部署の担当者が私に修正原稿を持ってきて手渡した。そうだった、昨日訂正と修正を指示したのである。締め切りもすぎていて少し困りつつも、退社時間によってやむなく今日に延ばしたのだった。

「はい、分かりました」

 受け取り、そう伝えた。彼女は会釈し、踵を返す。

 あ、しまった。忘れていた。私はあわてて彼女を呼び止めた。

「椎名さん、あの、書類の修正、どうもありがとうございました。お疲れさまでした」

 ここはありがとうを伝えるところだろう。私はそう思い、にこりと笑った。すると振り返った彼女もにこりと笑ってくれた。

「こちらこそお待ちいただきありがとうございます。引き続きよろしくお願いします!」

 今度は丁寧なお辞儀が返された。

 なんと不思議だろう。ありがとうの一言で双方気持ちが変わったのではないか。いつもならきっと少しでもイラッとしてしまうところ、たったの一言でころっと気持ちが変わったのが分かる。

 もしかしたらこれは魔法かもしれない。私はそんな気分にさえなった。

 世界中の人々がありがとうを言うと決めて毎日を過ごしたならばきっと誰だって幸せな気分になることだろう。ありがとうは万国共通なはずである。そうすれば、独裁や戦争だってきっとなくなるはず。

 私は次女に教わったばかりの魔法で、そんな壮大なことを考えていた。

 口にするだけで幸せになり、自分以外の幸せまで願うようになる言葉なんてなかなかない。

 口癖を『ありがとう』にしよう。

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【今日の記念日】

7月15日 世界ありがとうの日

Q&Aサイト「OKWave」をはじめとして、FAQソリューションや各種のQ&Aサービスで知られる株式会社オウケイウェイヴが制定。同社の企業理念である「世界中の人と人を信頼と満足でつないで、ありがとうを生み出していく」を実践し、世界中を感謝の気持ちでつないでいくのが目的。日付は同社の創業日である1999年(平成11年)7月15日から。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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