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10月30日たまごかけごはんの日

「ママのご飯が一番好き」

 満面の笑みで私に言う。頬にご飯粒をつけて微笑む6歳の娘は本当に可愛い。私の上手ではない日々の朝食や夕飯にも、ママは料理が上手だと褒めてくれるところも嬉しい。

 では、ママの作る料理でなにが一番好きかと聞いてみる。

「たまごかけごはん!」

 ママのご飯が一番好きだと言った時の笑顔の何倍か増しでそう答えるのだ。

 そうなのだ。娘の好きなママのご飯というのは『たまごかけごはん』である。

「ママも好きだけどさぁ、それは料理じゃないんだよね、たまご混ぜるだけのご飯よ」

 私がそう言うと、娘はいたずらに笑い、だって好きなんだもんと言う。私だって好きだ。でも、母としてはこう、多少でも私が作る料理と言うものを好きだと言ってもらいたい。

「じゃあさ、たまごかけご飯の次はなにが好き?」

 私が再び聞くと、娘は顎に手をやり、うーんと考えるそぶりを見せた。

「玉子焼きとしらすご飯と、お味噌汁、あとはからあげ……」

 お!母の手作りご飯的なメニューが出てきた!と思って喜んだのもつかの間。娘は続けて言う。

「くん!」

 あぁ、からあげくん、ね。美味しいよね。

 これでも毎日子供が(もちろん旦那さんもだけど)食べてくれるようにと調味して夕飯を作っているんだけどなぁ。煮物とかサラダとか、なかなか食べてくれないのは分かっていたけれど、たとえばしょうが焼きとか、麻婆豆腐とか、それこそ唐揚げもちゃんと作っている。子供の言うこととは言え、ちょっとはやっぱり悲しくなる。

 思わず顔に出てしまったのか、娘が顔を覗き込み、心配そうに笑う。

「ママの作るご飯は全部好きだよ」


 夕方から、私は保育園役員の集まりがあった。決めるのはクリスマス会の計画だが、それを口実にたまには母たちもお酒が飲みたいの会が少人数で開かれた。子供のお世話は旦那さんにまかせると言う目論見だが、私はそもそもお酒を飲まないので早めに帰ると決めている。

「うちなんてママのご飯嫌いって言うよ」

 男の子のママが言い、何人かがうんうんと頷いていた。うちなんて、に続いて各家庭の好き嫌いの発表会となる。どこの家庭も似たりよったりなのだなとどこか安心する。

 18時。宴はここから盛り上がるのだろうが、私はそろそろ帰ろうかとスマホを見る。ちょうど旦那さんからメッセージが来た。

 娘は、用意していたたまごかけごはんを食べないらしい。ママと一緒に食べたいそうで、何時に帰ってくるかと言う内容だった。私は早々に仕度してすぐに帰った。幸い、私もお腹が空いている。

 大好きなたまごかけごはん、ここぞとばかりに好きなだけ食べればいいのに。

「ただいま!」

 洗面所に向かい、急いで娘の元に向かった。

「ママ、一緒にたまごかけごはん食べよ。ママが作ったたまごかけごはんが大好き」

 嬉しそうな顔でそんなことを言うので、私も嬉しくなる。

 丸くぷっちり盛り上がった黄身をツン、と破り、少しのお醤油をポチり。泡立つほどにかき混ぜて、ご飯と混ぜる。

 かきこむそれは、確かに一番おいしい。

 そして、たまごかけごはんをもりもり食べる娘が1番可愛い。この笑顔が作れるのなら、これもママの手料理だ。

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【今日の記念日】

10月30日 たまごかけごはんの日

「たまごかけごはん」をキーワードに日本の古き良き食文化やふるさと、家族愛などを考えるきっかけとなる日をと、島根県雲南市の「日本たまごかけごはんシンポジウム実行委員会」(旧「日本たまごかけごはん楽会」)が制定。日付は第1回日本たまごかけごはんシンポジウムが開催された2005年10月30日から。この時期はたまごの品質が良いと言われており、また美味しい新米が出回る時期でもある。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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