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1月30日おからのお菓子の日

「あひるの何かかと思ったんだよね」

 基はそれを手にとって口に運んだ。

「ダクワーズ、あひる感ないよ」

 私が言うと、基はそのダクワーズを味わうように目をつむりながら答える。

「ダックって聞こえるのと、クワって鳴いているみたいだからかな」

「ああ、まあ、そうね」

 言われてみればと思いつつ、私も一つ開けて口に入れると、ふわっと軽い。そして噛むとじんわりと優しい味が染み出る。

 そこにあひるはいないのだった。

「うん、優しい味ですね」

「そうね、京ちゃんが好きそうな味。俺も好きだけど」

 私の名前、京子の『京』ちゃん。

「体にもいいんだっけ」

 パッケージを見ながら彼が聞き、私もパンフレットを見て確認する。

 ネットでみた広告につられてお試しを買ってみたおからの大麦ダクワーズ。大麦とおからの栄養や健康への効果は高いらしい。特におからって時々ダイエット本とかでもよく見るなぁ。大豆イソフラボン、だっけ。大麦もあまり知らなかったけれど、もち麦ご飯とか体にいいって聞く。

「こう言うのって継続して食べるといいんだろうけど、続けるのって結構難しいよね」

 私が言うと、彼は二つ目のダクワーズを手に取り顔を向けた。

「何で?良いと思えば続ければいいじゃない」

「例えば忘れちゃってそのまま続かなくなることもあるしさ、定期購入とかしても一人で食べきれなかったらって思うし」

 あとはどうかなと、私は出来ない理由を考える。彼は開けた二つ目を口に入れ、数回咀嚼して飲み込むとゆっくり話した。

「京ちゃん、どうしたら続くかなって考えたらいいんじゃないの」

「どうしたら続くかなって考えてみると続かないかもって思っちゃうんだもん」

 私ももう一つ手に取り、気持ち頬を膨らませてみる。続くかなと考えて、続かない理由が出てくるのだから仕方がないではないか。

「続かないかもって思ったら、その理由をなくせばいいじゃない」

 例えば、と言いながら彼はメモになにやら書き始めた。

 私と彼は正反対だなと時々感じる。簡単に言えば彼はポジティブで私は軽いネガティブ。私がこうだと思うと、彼はそれを綺麗に覆す。でも不思議とそれによって私が困ることはないので、うん、助かっています。

 彼が書き終えたらしく、私にその紙を差し出す。なぜか可愛いあひるが4羽並んでいる。その中の2羽に私が今挙げた続かない理由が書かれていた。

「食べ忘れたらってところは」

 彼はそう言って、それが書かれたあひるから矢印を延ばして○を書く。

「俺が教えるから大丈夫。こっちのも、もし食べきれなかったら俺が食べる」

 もう一つのあひるからも矢印を伸ばして○を書く。

「一緒に試してみればいいじゃない、ずっと」

 そう笑って最後に残った2羽のあひるを一緒に○で囲んで書く。

「一緒に食べ続けて、ずっと一緒に健康でいようよ」

 2匹のあひるの吹き出しには「クワッ」と書かれている。私が笑うと、彼が大きめの声で言った。

「ダックとクワッでダクワーズでしょ、でもってダック、クワッが2つでダクワー"ズ”だ!」

 ちょっとよくわからないけど、なんだか楽しそうだなぁと見ていて和む。
 彼と一緒なら色々継続できるんじゃないかと、ふわふわした気持ちで思うのだった。

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【今日の記念日】
1月30日 おからのお菓子の日

栃木県足利市に本社を置き、大麦に関する食品の製造販売などを行う株式会社大麦工房ロアが制定。美容や健康、便秘改善などにも良いとされるイソフラボン、大豆サポニン、大豆オリゴ糖の入ったおからを原料とした同社のお菓子を多くの人に食べてもらうのが目的。日付は1と30で「イソフラボン(1)」「大豆サポニン(3)」「オリゴ糖(0)」を並べた語呂合わせから1月30日に。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。


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