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3月30日 妻がうるおう日

★1ヶ月前★

「あ、同窓会のハガキ来てるよ」

 ポストにあった郵便物を仕分けていると、妻宛のハガキを見つけてそれを伝えた。妻は知っていたのか、困ったように笑った。

「それね、今回は止めておこうかな」

「なんで?」

「ちょっと今は忙しいしね。宏太の小学校の準備もあるし」

 長男の宏太はこの4月から1年生となり、確かにこの時期は忙しい。私も妻も働いているため、働きながらの準備はやはりバタバタしていた。

「あ、でも密を避けるためにって希望日選べるみたいだよ」

「うーん、でもねぇ」

 たまには久々の顔ぶれと会ってきたらいいのにと私は思っているのだが、妻はしぶり顔である。

「私、くたくたしてるからさ、会いたくないの」

 そう答えた妻を見て、私は作戦を実行した。


★本日★

「あ、エステの時間に遅れる!じゃあ行ってきます!」

「うん、行ってらっしゃい♫」

「ママ、行ってらっしゃーい♫」

 私と宏太が見送ると、すぐにくるりと振り返り小走りで私に寄り、耳元で囁くように言う。

「あなた、ありがとう。大好きよ」

 私は急に気恥ずかしくなり、ただ笑って再度送り出した。

 妻の顔はキラキラと輝いていた。それはうるおいに満ちてハツラツとしている。

 作戦は成功だった。

 私は宏太とハイタッチをして部屋に戻る。


 妻は結婚や出産後に段々と変わってきた自分の見た目に自信を無くしているようだった。けれど私からすればその変化さえ愛すべきところだが、本人にとっては違うのだろう。

 そこで、同窓会までの1ヶ月を妻に捧げることにした。そんなふうに言うと大げさだが、つまり、彼女が輝いて出かけられるようにするということ、それを目標にした。

 まずは内側からとして、「アミノコラーゲンヨーグルト」を毎日たべてもらう。前に職場の同僚に聞いたものだが、試してみることにした。1ヶ月続けることできっと何か変わるはずだと思ったのだ。実際、少しずつ妻の内外で明るくなっていったのはこのおかげな気がする。

 宏太も一緒に作戦を決行していた。
 彼は自分のことは自分でする、をスローガンにしてそれを実行した。少しでも妻の負担を減らすためであり、かつ小学生になる準備も兼ねていた。最初こそ妻の手ばかりを借りていたけれど、1週間もすれば自分で起きて自分で出かける準備が出来た。彼もこの1ヶ月、作戦は成功だった。

 私はと言うと、妻への感謝や気持ちを声にして伝えることを目標とした。

 普段なかなか口にしなかったせいか、やっぱり口にするのに抵抗があったのだが、今では慣れたものである。僅かなことでも妻がしてくれたことにはありがとうと言った。妻が笑えば可愛いと口にした。疲れているようであれば私が家事をした。

 妻のことを見続けて1ヶ月、もう妻が愛しくて仕方なくなった。これには私も驚いている。

 大切なものをきちんと大切にすると、その愛情はどんどん深くなっていくのだった。


 そして当日となった今日、彼女は約束の時間より早めに出てエステとヘアアレンジをしてもらうために出かけていった。これで私の作戦は完了する。この1年の彼女への感謝を込めて、私と宏太は送り出した。

 さて、新しい春が始まる。
 潤いに満ちた日々を過ごそう。

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【今日の記念日】

3月30日 妻がうるおう日

菓子、牛乳、乳製品、食品、一般用医薬品の製造販売などを手がける株式会社明治が制定。年度末に主婦のこの一年度の努力をたたえ、新しい年度(季節)の始まりに向けて「家のことありがとう、自分が喜ぶこともしてね」と感謝の気持ちを伝える日。家族の応援で身も心もうるおってもらうのが目的。日付は同社のアミノコラーゲンヨーグルトの発売日(2015年3月30日)から。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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