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12月23日不眠の日

 羊が何匹いるかなんて本当に数える人がいるのかと思う人も多いと思うけれど、一方で数えたことのない人なんか本当にいるのだろうかと思うのが僕である。

 昨日も21時に布団に入り、羊を数えて、見失って、諦めて、見つけて気づけば3時になっている。羊は一億匹ほど見つけたはずだ。でももうぼんやりとしていて今は覚えていない。


 僕は不眠症で、今日もまた満足に眠れない。
 そろそろ本気で不眠外来に行こうと思う。


 考えすぎだよ。目をつむっていれば眠れるでしょう。日中体を動かせばいいんじゃないの。疲れていないからだよ。

 よく聞くけど、よく聞く割に世の中不眠症の人が増えているってことはそうじゃない別の理由があるってことなわけで。じゃあどうすればいいのが分からないから、結局不眠症はなくならない。

 まぁでも、恐らく仕事が原因だろうとは思う。新卒で入社してまもなく1年が経つけれど、未だ自分の仕事の出来なさに辟易する毎日だ。


「世の中はあべこべだからね」

 会社の先輩Aがいつか言っていた。上司の指示と、客先の要望とキレイに整えようと思うができたと思うと翻り、またできたと思うとまたも翻る。こうじゃなかったの!?と思うことが多く、先輩Aに相談したりもした。そう言えば彼も、不眠気味だと言っていたけれど今はどうだろう。既に会社を辞めてしまって分からない。

 後任の先輩Bとはイマイチ肌が合わない気がしてほとんど話していないのだった。

「全ては考え方一つだよ」

 その先輩Bが最初に言ったことだった。たとえば挫けそうな出来事があってもそれを自分への試練だと思えば乗り越えようと思えるだろう。そんな風に言っていた。僕には、乗り越えられない試練がたくさんあるように思えて愕然とした。 


 でも、とぼんやりとした頭で考える。


 世の中はあべこべで、その全ては考え方一つだとしたら。起きている世界と眠っている世界。あべこべにしてみるともしかしたら違うのかもしれない。

 僕にとって、今この起きている世界が夢の中で、眠れない、もしくは僅かに眠っている世界こそが僕の本当の生きる世界だと思えたら。現実は夢の中だから少しは気楽に生きられるかもしれないし、現実ではないとする夢の中こそ自由に生きられるかもしれない。どちらに転んでも、今より気持ちは楽になるのではないか。
 いや、そもそもそんな考え方になれるだろうか。
 
 生きているのが死ぬほど辛いとまでは思わない。確かに仕事に行きたくないなと思ったりはする。出社したところで、1日を終える頃、今日も何もなかったと安堵するのだ。けれどその実、辛くと苦しくもないのかも知れない。自分でもよく分かっていないのだ。
 それを夢として、仕事を終えてさぁ現実に戻ろうと意気込んで眠ると言うのが僕の考えたあべこべ。

 意気込んで眠るってなんだ。

 あぁ、もう分からない。
 確かに先輩たちの言うとおり世界はあべこべだし、全て考え方一つである。それらは全て真実であり、一つではない。
 けれど、僕が眠れないと言う事実はただ一つである。

 僕は眠れないので、ひとまず、目を閉じる。
 
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【今日の記念日】
12月23日 不眠の日

日本人の半数以上がなんらかの不眠症状を持っているといわれる。しかし、その中の多くの人が対処方法や改善手段の正しい知識を有していないことから、睡眠改善薬などを手がけるエスエス製薬株式会社が制定。不眠の改善について適切な情報発信を行う。日付は2と3で「不眠」と読む語呂合わせから2月3日に。また、不眠の症状は一年中起こるので毎月23日も2と3で「不眠の日」とした。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。



 

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