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1月22日カレーの日

『本格的な様々なカレーがご自宅でも楽しめます』

 そんなテロップと共に流れたのは、その通り色んなカレーを楽しんでいる芸能人だった。

「カレー、いいね」

 小学三年生の娘が言い、食べた朝食の皿とスープカップをキッチンに持って行く。私もそれに続くように立ち上がり、出勤準備を進める。本日休みの夫は何とも優雅にまだスープを飲んでいた。

「こう言うのってさ、食べ比べしてみたいよね」

 夫が言う。

「カレーなんて少量ずつ作るのには鍋もいるし後かたづけも大変そうだからねぇ」

 私が言いながらも忙しなく準備をしているのが目に入ったのか、さっさと残ったスープを飲んで台所に向かった。少しかわいげない答えだったかなと反省しつつ、夫を見る。彼はおもむろに冷蔵庫の野菜室を開けていた。そして小さく頷く素振りを見せると、じっと見ていたことがバレていたのか私の顔を見る。

「今日は夕飯、俺が作るよ」

「え」

「行ってきまーす」

 私が少し驚いた声を出していると、玄関では娘が既に靴を履いている。慌てて行ってらっしゃいと言って見送り、再び夫を見るとにこにこと笑っている。さては『ご家庭でも楽し』むつもりなのかと思い、私はすべてお任せすることにした。彼、休みだし。

「では、よろしくお願いします!!」

 娘の10分後に私も玄関を出た。


 かくして夕飯を作らなくて良いと言うことになったので、気分は上々で1日中業務が捗った。おかげでいつもよりも早く帰宅できた。
 17時、既に娘も帰ってきており、夫と一緒に台所仕事をしているようだ。

「さて、ご飯にしようか」

 すでに鼻孔をくすぐるこの匂いはまさしくカレーである。

「すごいね、いくつ作ったの?」

 私が食卓を拭きながら聞くと、夫は自慢げに言う。

「本日は4種のディナーカレーでございます。もちろんサラダとスープもご用意しています」

 そんな手の込んだこと。ああ、嬉しい。帰宅後に何もしなくて良いというそれだけでも幸せなのに、「後かたづけまでちゃんと俺がするよ」そう、夫は言ってくれた。

「じゃあ皆で運ぼう」

 私はそう言って、トレーに乗せて食事を運んだ。小さな椀の中にそれぞれのカレーが注がれている。左右前後いろんなところから様々に少し違ったカレーの香りがして食欲をそそる。

「いただきます」

 3人で手を合わせて食べ始める。私は少し色の濃いカレーを食べ、夫はさらさらとしたもの、娘はスパイスの香りがしっかりとするものをそれぞれ食べた。確かにそれらは本格カレー、と言う雰囲気があった。

「コクがすごい!」

「ご飯が流れるように進む!」

「給食もカレーだったけど、もっと食べられるわ」

 娘が言い、夫が驚いた。

「ちょ、ちょっと、明日も今日の残ったカレーだよ」

 少し困ったような顔で夫が言う。

「どのカレーも味が違うんだから飽きないよ。今度は給食のカレーとも食べ比べしたいね」

 そう言って笑うので、私も夫も必死にあの頃の給食カレーを思い出す。本格よりも給食の方が恋しいかもねぇと彼は笑った。

 今、4種の味を食べ比べをするのも良いけれど、あの頃との食べ比べをするのもとても幸せを感じるのだった。そしてそんな風に思える料理は案外に少ないかも知れない。

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【今日の記念日】
1月22日 カレーの日

カレーを製造する事業者の全国団体である全日本カレー工業協同組合が制定。国民食と言われるまでに普及したカレーのよりいっそうの普及拡大により、健康で豊かな消費生活の実現に寄与するのが目的。日付は1982年1月22日に全国学校栄養士協議会が全国の学校給食の統一メニューとして「カレー」を提供したことにちなんで。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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