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2月28日ニューパルサーの日

 28歳にもなってよもやカエルを追いかけることになるとは思わなかった。でもこれ、ずっと好きな機種なのだ。3匹並んで横向きにぽかんと口を開けた座りカエルが僕を祝うように鳴く。

「よかったぁ」

 思わずぽつりとつぶやき、そのテラテラと光り輝く台枠に目を奪われながらも安堵する。陽気な音楽に合わせてそのゲームを消化していく。

「入った」

 隣の神田が割と大きめの独り言を言う。彼がレバーを押すと、画面上部の大きなカエルの両サイドに小さな妖精のような女の子が現れる。同時にカエルもケロケロと飛び出してきた。1つ目のボタンを押し、2つ目も押す。カエルたちは帰らずにとどまって居てくれる。3つ目のボタンを押し、ゆっくと指を放した。

「♪ケロケロ、ケロケロケロ♪」

 真ん中にいたドットのカエルが右に左にと首を伸ばしなが歌い出した。粛々とリールの中の大きなカエルを揃える。

 俺はちぇっと軽く舌打ちをする。

 神田は何度目のボーナスだろう。俺はようやく一度当たったばかりだというのに。でも、まぁいいか。勝った方が夕飯をごちそうすると言う約束をしたのだ。

「調子いいな!今日の夕飯よろしく!」

 まもなく終わる自分の大当たりを消化しながら神田に言う。神田は始まったばかりの大当たりを丁寧に消化しつつ、こくりと頷いた。

「焼き肉弁当でいいか」

「いやいや、焼肉屋連れて行ってよ」

「山口と行くと何人前食べるか恐怖だ」

 わざと肩をすくませて怯えてみせる。俺はちょうどボーナスを消化し終えた。何となく一呼吸つき、レバーを軽く叩いて再度ゲームを開始する。1ゲーム目からドット柄のカエルが鳴き、ちょっと嬉しい。

「そんなこと言うなよ。安い焼き肉屋でいいからさ。あ、食べ放題でいいじゃん。あと飲み放題とデザート食べ放題もつけてさ」

 俺が淡々とゲームを進めると、ボーナスゲームを終えた神田がこちらを見る。

「なぁ、カエルの王さまって知ってる?」

「なんだっけ。お姫様とカエルの約束の話だっけね」

 あまり覚えていないなぁと思いつつなんとか思いだし、ついでにその物語がこのスロット台のカエルのモチーフになっていたのではなかったかと思い出した。

「そう。井戸に落としたボールをカエルに拾って貰う代わりにまぁようはそのカエルと仲良くするって話なんだけど」

 ああ、確かにそんなような話だったか。うっすらと思い出し始める。

「でもさ、ボールを拾って貰った代わりとしては結構重たいんだよね、お返しの要求が」

「それくらいいいじゃん、拾って貰ったんだから」

 俺はそう言ってゲームを進めていくが、なかなか熱い演出が見られない。一方の神田は何度めかのカエルが鳴いている。

「ボール一つ拾うだけで以降の生活レベルを爆上げするってどんな設定よ」

 そう言いつつ、神田のリールがブルリと震えたのを俺は見逃さなかった。神田がゆっくりと左リールを止めるとそこにチェリーが現れた。

「余裕のある人は優しくしなさいって教訓でしょう」

 神田はやっぱり丁寧にビッグボーナスを揃える。俺は自分の台を向き、ゲームを進めた。隣から神田が言う。

「焼き肉屋、連れて行きます」

「がっつり食べ放題コースと飲み放題でよろしくお願いいたします」

 隣のお姫様は笑い、カエルのお腹はなるばかりであった。

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【今日の記念日】

2月28日 ニューパルサーの日

岡山県岡山市に本社を置き、パチスロなどのアミューズメント用機械の開発と製造を手がける山佐株式会社が制定。2021年に同社を代表するパチスロ機種である「ニューパルサー」が登場してから28周年の記念イヤーとなることを機に、その認知度の向上と今後リリースされるシリーズ作のプロモーションが目的。日付は「ニューパルサー」が1993年2月に稼働し始めたことと、愛称である「ニューパル」を「28」ともじって2月28日としたもの。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。


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