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6月2日 おむつの日

 私は子供のおむつ替えが好き。

 おむつを替えているとき、我が子が今しかない赤ちゃん期であることを実感するのだ。

 もちろん、赤ちゃんを実感する場面なんておむつ替え以外にも山のようにある。

 新生児期には首がすわり、視線が合うようになったり、不意に微笑んでくれるときゅんとする。気づけば寝返りをうっているし、そうかと思うと重そうなお尻をずりずりと動かしてズリバイをしてみたり、あっと言う間にハイハイだってする。

 もちろんそのどれも愛おしいのだが、時々ある一瞬の『今しかない!』に比べ、おむつ替えはその『今しかない!』を毎日体感出来る貴重な経験なのだ。

 だから、たとえば日々進化する世の中の技術によって、『自動おむつ替え機』などというアイデア商品なんかが生まれたとして、おむつ替えの手間がなくなると言われても、きっと私は買わずに自分の手で替え続けることだろう。

 間もなく3歳になる我が子は未だおむつを履いてくれている。おかげで私は彼が生まれてからずーっとある種の赤ちゃん感を実感させてもらっている。最近はトイレトレーニングも始まっているので、尿意を教えてくれて自分でトイレに向かうことも多くなった。

 おむつを替える頻度もたとえば去年と比べると圧倒的に減っていて、正直寂しい。寂しいけれど、必要な成長なのだと思い聞かせて日々彼を抱きしめている。

 と、愛情たっぷりで毎日接しているつもりの私だが、この『おむつ取れかけ期』が意外とやっかいであることに最近気づき、ちょっと疲れることがある。

「ママ、おトイレ!」

 夜、お布団に入り、さあ寝ようと言うと彼は元気よく言うのだった。お布団に入る前に行ってきたけどねと思いつつ、分かったと返事をしてトイレに向かう。

 彼の用を終えて寝室に戻り再び布団に入った。今日何があったか、どんなことをして遊んだかなどと眠る前の会話をつなぎ、それもおぼろになった頃、再び彼が言う。

「ママ、おしっこ出た!おむつ替えて」

 さっきトイレ行ったよね!その前だってトイレ行ったよね!君は一体おむつになにを出したというの!!

 と、眠気のあまり爆発しそうな何かを堪え、落ち着け落ち着けと深呼吸する。大きく息を吐き、私はこの日最後(と願いたい)のおむつ替えを行う。

 眠すぎて、無言の私。

 生理現象なのだから彼が悪いわけでもないのに、どうしたってイラっとしてしまう。おむつ替えが好きだと言ったのに。そんな自分がイヤで笑ってあげられない。

 立ったままおむつを替えるため、私はしゃがみ、そのまま息子の体を支えると、ふわっと温かな何かに包まれた。

 それはいつの間にか大きくなった息子の両手。

「おむつ替えてくれてありがとう」

 そう言うと、息子はぎゅっと私を抱きしめた。

 ぎゅっとされるとうまくおむつを履かせられないじゃない。

 私は無言でなんていられなくなる。

「ママこそ、おむつ替えさせてくれてありがとう」

 いつの間にありがとうがこんなに上手に言えるようになったのだろう。

 おむつ替えは赤ちゃんを実感するのではなく、赤ちゃんから子供になるまでのはぐくまれた心を感じる時間なのかも知れない。
 それだって、やっぱり今しかないのである。
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【今日の記念日】

6月2日 おむつの日

おむつを通じてすべての赤ちゃんの幸せで健やかな成長について考えてもらおうと、赤ちゃん用の紙おむつ「GOO.N(グ~ン)」を製造するエリエール大王製紙株式会社が制定。赤ちゃんとのコミュニケーションツールにと絵本も発刊する。日付は6月2日で「062」を「おむつ」と読む語呂合わせから。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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