10月22日アニメの日
小学生の頃に見たアニメの主人公が猫嫌いだと知ったので、私も苦手(だと思うよう)になった。
みつあみが可愛かったので、毎日みつあみにしてもらい、中国で修行したと見たので私も中国······にはさすがに行けないので、ちょっと中国語の勉強をし始めた。
水を被ってもお湯を被っても性別が変わるなんてアニメなことは出来ないけれど、みつあみをして中国語を勉強する私はもう完全に主人公なのだと信じきって生きていた。
現実と架空の世界を行き来するように日々を過ごすことはとても楽しくて充実した日々だ。たとえば現実で落ち込むことが起きたとしても、私にはアニメがあって、それも一つではなくたくさんのアニメ。その中で元気になれるものを見れば、その世界に入り込みそのまま元気になる。悲しみに浸りたければそういう作品を見て、主人公と一緒に涙を流すことが出来る。
そんなことを同じアニメ好きの友人に話したら、だったら自分でアニメを作ってみればいいじゃないかと言われた。生きたい人生をアニメの主人公に歩ませてみればいいと。あなたがアニメの主人公になれるなら、アニメの主人公はあなたになることだって出来る。
なるほどね、と思って私の将来の夢が決まったのは今日、16歳の誕生日の前日だった。
「とうとう同い年になるよ」
冒頭のアニメ主人公とまもなく同じ年になることに感慨深さを感じながら、早速夢を描くことにした。何になりたいだろうか。もういっそ思い切りアニメな展開を探ってみる。
何か秘密の組織に入ってみたい。銃弾飛び交う中を駆け抜けてみたり、スリルある毎日を生死ギリギリで生きてみたい。
と、思いきやとてつもなく平凡な日々をただただ送ってみたい。そのなかで、でもやっぱり起きてしまうトラブルに翻弄されてみたい。恋愛とか仕事とか、そう言うよくあるトラブル。
あとは、たとえば急な展開で出来るキャリアウーマンになって、仕事仕事の人生を生きてみたい。
自分の中で色々考えてみたけれど、どれも思うようにハマらず、挙げ句もう既にアニメになっている展開ばかりである。
録画していたアニメを見返し、ブルーレイを鑑賞し、動画アプリを起動させ、気付けばもう23時。まもなく誕生日を迎える。15歳の私は16歳になり、本当にあの主人公と同じ年になる。
でも、私は何者にもなっていないのだった。
何者かになろうと彷徨ってみたけれど、何者にもなれず、今、心にあるのは驚くほどの充足感である。
あれ、と思った。
私は将来の夢を探すべくアニメを見倒していたのに、何ということか、もうそれだけで十分であることに気づいた。
アニメに憧れて、何者かになりたかったわけではないのだ。
私は『いつでも何者にでもなれる』と思いながらアニメの世界に浸ることで、もう十分主人公になっているのだった。
私が作らなくても、素晴らしいアニメはもう世の中に山のようにあって、そこから自分のなりたい主人公と人生を選び出すことが、視聴者である私の幸せになっている。
16歳になった私は、もう何度も見たあのアニメを見て、やっぱり中国に行こうかしらんと将来の夢を訂正した。
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【今日の記念日】
10月22日 アニメの日
一般社団法人日本動画協会「アニメNEXT100」が制定。日本初の国産アニメーションが公開されてから100年になる2017年に、日本のアニメーションの魅力を世界に向けて発信するのが目的。日付は日本最初のカラー長編アニメーション映画「白蛇伝」が公開された1958年10月22日から。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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