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4月22日 ダイヤモンド原石の日

 ダイヤモンドのような娘が産まれた。

 キラキラ見えるそれは、産まれたばかりの彼女の人生、未来が輝くものだと示しているようで、私は胸がいっぱいになった。

「すごい、黒目に光があたって綺麗。いろんな色が映って見える」

 私が子の顔や瞳を眺めながら私が言うと、夫が微笑んだ。

「ダイヤモンドみたいだね」

 彼の嬉しそうな顔も印象的であったが、そう言われてしっくりと来た。

 彼女の目はダイヤモンドのようである。

 透明や白のように見えるが光に透かすとそれは様々な色になる。それも角度を変えると、色んな色が光って見えるのだ。

 透明と白の彩り。

 彼女の名前は、それにちなんだ名前にした。

 この気持ちを何か形に残しておこうと思って、彼女の誕生石のベビーリングを作ることにした。運命的なことに、彼女の誕生石はダイヤモンドである。彼女が20歳になったらそれを渡そうと決めた。


 そう決めて、早いもので10年が経つ。

「私、何にもできない」

 10歳になった彼女は少し自信をなくしていた。思ったように算数が理解できないでいること、体育での鉄棒競技もなかなか次のレベルに進めないこと、絵を描くことも苦手だと感じること。

 色んなことに挑戦するも、自分の思うとおりになっていないことに歯がゆさを感じているようだった。

「何もできないなんてことはないよ。だって、あなたが赤ちゃんの時には歩くこともしゃべることも出来なかったのに、今はもうこんなに話せるし、走ることもできる」

 私がそう言うと、やっぱり不満そうな顔をして言い返す。

「そう言うことじゃないんだよ、お母さん」

 分かっていたけれど、敢えて言ってみたのだが、やっぱりだめでしたか。

「今の私が出来ることはきっともっとあるのに、それが出来ないの。出来るはずなのに、出来ないの」

「最初は誰でも出来ないけど、磨いていくと出来るようになるんだよ」

 私はそう言って彼女を手招きした。口をとがらせた彼女は渋々私の元へ来る。私はスマートフォンで画像を検索して、それを彼女に見せてやる。

「なに、この石ころ」

「綺麗だと思う?」

「うーん、別にきれいではないかな」

 私はそれを聞いて頷き、ちょっと待っていてねとその場を離れた。部屋の隅の棚にあるそれを持ってくる。丁寧に封をほどき、丁寧にそれを取り出した。

「きれい。あ、なんだか色んな色が映って見えるよ」

 彼女のベビーリングである。少し悩んだけれど、見せることにした。

「これはあなたの誕生石です。ダイヤモンドね。20歳になったらプレゼントするから、今日は見るだけよ」

 そう言って見せると、彼女は喜んだ。

「さっき見せた石の画像ね、あれを磨いて磨いて磨き続けると、こうなるんだよ。だから、今はまだ出来ていないなと思うのだったら、もう少し、もう少し磨いてごらん。きっとこんな風に輝き始めるわ」

 私がそう言うと、彼女は嬉しそうな顔のまま大きく頷いた。

 永遠の輝きとよく聞くが、なるほど確かに。私には生まれたときからもうすでに彼女がダイヤモンドのように輝いて見えている。

 けれどきっともっと輝くのだろう。

 そんな未来が、あなたの横顔に見えた。

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【今日の記念日】

4月22日 ダイヤモンド原石の日

ダイヤモンドを原石から取引して、研磨、デザイン、販売までを行う世界的なジュエリーブランドであるTASAKI(株式会社TASAKI)が制定。ダイヤモンドの原石からその輝きを生み出すように、女性の人生を今日より明日へと輝かせることを提唱する日。日付は4月の誕生石がダイヤモンドであることと、ダイヤモンド業界ではひとつのダイヤモンド原石を対に分けて磨く(ツインダイヤモンド)ことが通例のため、調和を意味する「2」の双子(ツイン)の数字である「22」を組み合わせて4月22日とした。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。



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