7月26日 うな次郎の日
私は妻に秘密を抱えている。
毎朝、彼女は6時半に起床する。そして私は7時頃に起床するのが常である。
けれど本当は彼女が起きる6時半よりいくらか前に目を覚ましているのだ。でも”起床”はしない。あくまで、布団の中で目を覚ますだけ。なぜかというと、彼女がすやすやと眠っているその寝顔を見ることが私の大きな幸せだから。さらに言うならば、そのかわいらしい寝顔を見た後で、私はうつらうつらと夢と現実の境で酔いしれている時間が幸福で仕方ないのだった。
だから私は今日も彼女にばれないように早めに起きて、朝から幸せを堪能するのである。これは夜では味わえない幸福。
そしてしばらくして彼女が起床した後、私も起床する。
「おはよう!」
「おはよう。今日もぐっすり寝ていたね」
にこりと笑う彼女の顔ももちろん好きだ。結局私は彼女がいればそれだけで幸せなのかもしれないな。顔を洗い、身支度を整え、食卓に座り、彼女と一緒に朝食をとる。
「いただきます」
夫が出かけたら、私も準備をし、出勤する。
今日は予定している仕事が山積みだ。考えただけでげんなりとする。
けれど、すぐに思い直した。
ちゃんと『自分の仕事』として割り振られているのはとても幸運なこと。それをやりたくないと思ってしまえば、私はこれから『やりたくないこと』をしに会社に行くと言うことになるので、それってどう考えてもマイナスである。
だから、その山積みの仕事をすべて片づけてしまいたい!と、まるでそれらの仕事を『やりたいこと』と自分に思わせれば、私はこれからやりたいことをしに会社に行くこととなる。
ほんと、思いこみの力と考え方って有用である。
自分がそうだと思えば、そうなのだ。
で、結局しっかり仕事を片づけて帰宅するのだから、私は今日も良くやった!!とはいえ、体も疲れているし、あまり手を掛けた夕飯をする気力はない。朝に下拵えしておいた豚汁を作り、スーパーでアレを買って帰ることにした。
「おかえり!今日は遅かったね」
「ただいま、疲れたよー」
一足早く帰宅していた夫がお風呂をためていてくれたので、先に入浴する。その後にパパッと夕飯づくり。
「お!いいね、鰻丼と豚汁!」
「うん、ちょっと力つけようと思って」
嬉しそうにいただきますと言って、夫が鰻丼を口にし、私もそれに続いた。
うん、おいしい。
さて、就寝時間。
私は、夫に秘密にしていることがある。
私はいつも彼より先に布団に入り、その後30分ほどしてから彼が寝室に来る。そして彼が眠っただろう頃を見計らって、うっすらと豆明かりをつけて彼の寝顔を見るのが毎晩の日課なのだった。
彼の寝顔が可愛い。この時間が至福の時である。
わずか数分、彼の寝顔を見て満足し、私は眠りにつくのだ。だからこれは夜だけの幸福。
私だけの秘密。
・・・・・・あ、あともう一つ今日は秘密があったのだ。
今日の夕飯は『鰻丼』ではない。精巧にうなぎに見立てた蒲焼き風の鰻かまぼこである。なんとうなぎフリーだと言う。おもしろいから夕飯にしれっと出してみたけれど、彼は美味しそうに食べていた。そして実際美味しい。
秘密も思いこみも、幸せであれば問題ないのだ。
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【今日の記念日】
7月26日 うな次郎の日
新潟県新潟市に本社を置き、水産練り製品の製造販売などを手がける一正蒲鉾株式会社が制定。うなぎの蒲焼きをイメージした魚のすり身で作った練り製品の「うなる美味しさうな次郎」をより多くの人に味わってもらうのが目的。日付は7月26日を0726と見立てて「う(0)な(7)次(2)郎(6)」と読む語呂合わせから。夏の土用の丑の日も近く、「うなる美味しさうな次郎」を食べて、精をつけてもらいたいとの願いも込められている。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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