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9月15日 スナックサンドの日

    サラダでも、肉でも、何でもいいな。

 隣向こう2席の先輩たち2人の話し声を聞きながら僕は思う。おいしい店のサラダを作っただとか、高価な和牛ステーキも良いけれどたまには牛丼も食べたくなるだろう、とか話している。

 超グルメな先輩と、そうでもないけれどおいしいものが好きな先輩。昼休み、食いしん坊談義を広げていらっしゃる。

「午後のミーティング始めるぞー」

 部長が言い、彼らの談義が終わると同時に僕は席を立つ。



「はい、早乙女君」

「はぁ、どうも」

 夕方の帰宅時、先の談義をしていたグルメじゃない方の先輩に捕まった。そして何故か、パンをお裾分けしてもらっている。

「僕、別にいらないんですけど」

 しまった、少し気分が態度に出てしまった。

「まぁ、食べてみてよ」

 そう言われ、僕は渋々それを一口かじる。

「・・・・・・あ、おいしい」

 僕は思わず口にする。それが聞こえたらしい先輩は、ぱぁっと表情が明るく光り、満面の笑みである。

「でしょでしょー!そうなんだよ、これめっちゃ美味しいの」

 そう言って先輩も自分の分を食べ始めた。

 それはスナックサンドと言う、パン耳のないサンドイッチである。四方を挟んだパン同士でくっつけている。味は色々あるらしい。今もらって食べたのは黒糖のスナックサンドでその中身は洋風栗あんとミルクホイップと言った、モンブラン(風)。

「うん、これこれ。あぁ、おいしい」

 美味しそうに既に満足げな顔でパンを頬張っている。

 可愛いな。

 ・・・・・・ん?!

「早乙女君があのコンビニにいなかったら、私も入らなかったし、きっと見つからなかったよ」

 そう言うと、ありがとうと柔らかい表情をさらに崩して笑う。

「急いでいたら引き留めてごめんね。でも、この美味しさを誰かと共有したくて・・・・・・。そう言えば早乙女君と食事を一緒にしたことがないなと思ってね」

 言われてみればそうかもしれない。僕は昼食をとったり取らなかったりだし、彼女は彼女で最近は忙しいのか、ゆっくり昼に出ていることもなさそうである。

    何だか気を使われたようでどこかくすぐったい。

「このシリーズ、大好きなんだ。手軽に食べられて種類もたくさんあるし。私はどちらかと言うと好きなものをずっと食べちゃうタイプで、これもそうなの」

 確かに、このパンを食べているのを何度か見たことがある。

 あれ、でも・・・・・・。

「先輩、いつも2つ買って残していません?」

 そうだ、袋を2回開けて、しばらくしてその袋を鞄にしまうところを度々見かけるのである。

「これ、2個入っているんだけどさ、ほかの味も食べたくて2パック買っちゃうわけよ。でも全部は食べられないから、1枚ずつ食べて残りは持って帰るの。で、翌日のランチも同じ味」

 それを聞き、自分でも驚くようなことを僕はすぐさま提案した。

「じゃ、じゃあ僕も今度から2つ買うので分け合いましょう!」

 ん!?

 自分で言って驚いた。驚いたけれど、何故か妙に満足している。

    先輩の反応は・・・・・・。

「いいの!?めっちゃ嬉しいよ!!」

 そう言って残っているそれをかじる。

 僕もまねをしてかぶりつく。中のクリームがどこかさっきより甘く感じているのは気のせいだろうか。

 食に興味がないと思っていたけれど、誰となにを食べるかって結構大事なのかもしれない。


 スナックサンドは僕のコミュニケーションツールになった。

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【今日の記念日】

9月15日 スナックサンドの日

愛知県名古屋市に本社を置き、「本仕込食パン」「ネオバターロール」など多くの人気のパンで知られるフジパン株式会社が制定。同社は1975年9月15日に食パンのミミを落とし、中身をはさんで四方を圧着して作る携帯サンドイッチを日本で初めて発売「スナックサンド」と名付けた。その「スナックサンド」が2015年で発売40周年になるのを記念したもの。日付は「スナックサンド」が発売された日から。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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