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2月19日チョコミントの日

 米田祐二こと、コメちゃんは何か考え事をしているらしく、その手に持ったスプーンの上でアイスクリームが溶け始めている。

「コメちゃん、溶けるよ」

「え、ああ、うん」

「今度はまた何を考えていたの」

 私がいつものようにあきれながら聞くと、彼は少し困ったような照れているようなおかしな表情をする。溶け始めたアイスを口に入れ、味わうようにして目を閉じる。

「うーん、うん。美味しいわ」

 目を薄く開けて器の位置を確認しながらもう一口をスプーンで掬ってまた目を閉じた。なぜ開けない。

「そんなの、最近いつも食べてるじゃん、チョコミントアイス」

 真冬にこたつでアイスが至高であると豪語し、毎夜毎夜アイスを持参してうちのこたつに入りにやってくる。

 別に出かける予定もないからいいけれど。

 うちの家族も慣れてしまっているから良いけれど(コメちゃん、お土産のアイスも忘れないからね)。

 いつまでたっても慣れない奴もいるということはいまいち理解しないらしい。

「昔は苦手だったんだよ」

「チョコミントアイス?」

 私はおみやげに貰ったいつもの和風アイスの封をようやく開けた。勢いよく開けたせいか、なぜかコメちゃんのミントが香る。

「いや、チョコミント全般。子供の頃はむしろ嫌いだったかも」

 コメちゃんとは私が中学生になるときにこのマンションに引っ越して来てお隣同士になったことからつき合いが始まった。出会いが遅い分、幼なじみほど幼なじみでもなく、かといって恋人同士のような初々しさもないので、ほんと、綺麗にお隣同士である。

「こうさ、パクって口にすると甘いんだよ。でも溶かしていくと段々スーッとミントの香りが広がってさ、でもまた口の中に意識を向けると甘さが馴染んでくるんだよ。不思議でさ、最近ほんと好き」

 一口食べて目を瞑るのはミントの後の甘さを堪能したいからだそうだ。

 変な奴。

「鈴はさ、苦手だったけど大人になって食べられるようになったものある?」

 私は自分のアイスにかじり付きながら少し考える。でもすぐ答えが浮かぶ。

「あんこ、ひじきの煮物。あ、あとなすび」

 そうそう、今食べているアイスだってあんこが入ってる。大きくなってから好きになった。ひじきも、なすびも。

「ふふ、全部俺の好きな物と一緒じゃん」

 全部コメちゃんが好きな物。

「偶然ね」

 彼はふぅん、と疑わしい目で頷くようにして見せるとまたチョコミントを口に入れて目を閉じた。

 その隙に余っていたスプーンで彼のアイスを掬って食べた。

 甘くて、さわやかが過ぎる。

「うまいでしょ、鈴」

 バレていたのか。私は彼がそうするように目を閉じて口の中に意識を向ける。

 私は、コメちゃんの好きな食べ物が苦手だったけれど、好きになった。なんだったら、コメちゃんみたいなぼんやり自由な男の人は苦手な方だけど、私はコメちゃんを好きになった。
 コメちゃんを好きになった。

「近藤先生、チョコミント好きなんだよね」

 私がそう言うと、コメちゃんはばっちり目を開けた。開けたまま、赤い顔をしてアイスを食べた。

 私はたぶん、当分チョコミントを好きになれそうにない。

 でも、チョコミントが好きなコメちゃんが好きでい続けるんだろうなと思って、どこかスーッとした。

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【今日の記念日】
2月19日 チョコミントの日

【チョコミントの日】を制定しよう!プロジェクト(代表・チョコミント仮面。)が制定。クラウドファンディング上で同プロジェクトが呼びかけられ、多くのチョコミント好きの熱意により目標額を達成し、日本記念日協会に登録申請、審査会で合格となり登録された。チョコミントの魅力を多くの人に伝えることで、チョコミントで盛り上がれる日にしたいとの願いが込められている。日付はアメリカの全米菓子協会が2月19日を「チョコミントの日」としており、日本でもこの日に多くのチョコミント好きがSNSなどで「チョコミントの日」を祝う投稿をするなど特別な日となっていることから。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。



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