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7月30日 お母さんが夢に乾杯する日

    お母さんと呼ばれると嬉しい。

    おかあさーん!と呼ばれて走って来て抱きついてくれるのも嬉しい。ぎゅうっと抱きしめ返すと、我が子の汗の匂いがして、それを嗅ぐことさえ嬉しい。

『私の産んだかけがえの無い可愛い我が子が汗をかいては全力で笑って生きている』

    それを実感できるようで私はとても嬉しい。私はこの子のために生きて、この子を愛して育てている毎日が幸福なのだと思えるのだ。


    でも、時々、どうしたって笑えない日もあるのだ。その理由はくだらないものから深刻なものまで様々である。餃子の皮が破れてしまい、不意に泣くこともあるし、仕事で思いがけないミスをして不甲斐なさから涙することもあるのだ。多分、悲しいのはその出来事そのものでは無い。小さく積もった何かの欠片が集まって、ある日突然私の中の風船を静かに割ってしまう。

    そうして、破れた餃子を前に泣く。

    その欠片の正体の1つには、誰かと比べて感じる自分の不甲斐なさがあるだろう。誰かは私でないし、私は誰かじゃないのに。

    朝から晩まで家事に仕事にフルスロットルで走り回るのに思うようにならないもどかしさ。

    その欠片たち。


    私たちは常に疲労困憊で笑っている。


    だったら、助けを求めればいいとよく聞くけれど、不甲斐なさも疲労困憊も、たった1日助けて貰ったところで、翌日もまた同じなのだと思うと容易に誰にも頼れない。今日、誰かに頼ったならば明日も頼りたい。明後日も頼りたい。もうずっと頼らせて欲しいと思ってしまい、今日1日を頼れない。


    そうして気づくと、私はその場に1人立っている。夫も友人も、昔の同僚もママ友も見えているのに、触れられない距離にあるように思えるのだ。こうなるともう頼れないどころか、涙で周りが見えなくなる。

「なんで私ばっかりこんなに頑張らなくてはならないのだ」

    こんな風に投げやりな気持ちになり、涙は熱く、眉間にシワが寄る。

    でも、そんな遠く深い場所にも伸ばしてくれる手があって。それは見知らぬどこかの誰かだったりするのだ。SNSで見つけた、私と同じような気持ちや境遇の人達はこの世界にたくさんいる。頼る頼られるとか考えずとも、色んな事を共感出来るだけで十分なのだと知る。


    私たちは1人ではないこと、同じ誰かがどこかにいてくれること。


    それを知っているだけで、熱い涙は冷やされ、眉間のシワは伸びるのである。

    私ばっかりと思うことも多いけれど、それは『私たち』ばっかりと言えるし、『ばっかり』と言うのではなく、私たち『だけが』と言い換えれば、日々の苦労や疲労は私たちだけの特権となるのだ。


    まぁ、色んなことをグダグダ考える日々やそんな自分に辟易する日もあるけれど、年に1度くらい、全てを許す日があってもいいじゃないか。

    愛する我が子と夫、そして『私たち』に、

    『乾杯』

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【今日の記念日】

7月30日 お母さんが夢に乾杯する日

神奈川県横浜市から全国に向けて百万母力の子育て情報紙「お母さん業界新聞」を発行する株式会社お母さん業界新聞社が制定。日本中のお母さんがつながり、お母さんであることの喜びを共感し合い、7月30日午後7時30分に一斉に乾杯するイベントを行うことで「孤育て(孤立した子育て)をなくし、お母さんの笑顔をつなぐ」のが目的。日付はお母さんが乾杯するのに相応しい月日として夏休み中の7月下旬で、同紙の前身の名前がフランス語で30代を意味する「トランタン新聞」であったことから30代の30を合わせて7月30日としたもの。子育ての現状やお母さんたちの気持ちをより多くの人に知ってもらい「子育てに夢が描ける社会の実現」に向けて考える日にとの願いが込められている。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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