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ただいま と おかえり

夜の帰り道。たまたま友人から電話がかかってきて、話しながら自宅に着いた。

玄関を開けた私はちょっとふざけて「ただいま〜」って言ってみた。

そうしたら友人が続けて「おかえり〜」。

ちょっと声をあげて笑ってしまった。それは電話でただいま、おかえりを言い合ったのが可笑しかったからではなくて、

ちょっとだけ照れくさくて、ちょっとだけ心がじんわりしたのを隠すため。

思えば、実家に居た頃は毎日帰宅するとほぼ必ず誰かが家に居て、「ただいま」って言えば「おかえり」って返ってきた。そういうやりとりが当たり前すぎて、もはや一つの習慣とか癖みたいなものだった気がする。

一人暮らしを始めて、最初の頃は実家暮らしの癖で、誰もいない部屋に「ただいま〜」なんて言ってた。でも、月日が経ってそんなことも段々しなくなってしまった。たぶん、誰もいない空間に響く私の「ただいま」にちょっと寂しさを感じてしまったから。

そんな話を電話をしていた友人にしたら、

「私はホテルとか泊まった時は、自分でただいまって言った後に、自分でおかえり〜って言うよ」って笑いながら教えてくれた。

そうか、自分で自分に「おかえり」って言ってもいいのか。

その部屋に誰も居なくても、その場で聞いている人が居なくても、代わりに私自身が今日一日頑張った自分に

「おかえり。今日もよく頑張ったね。えらい!」

って言ってあげるのも、なんだかいいかも。そんなふうに思えた。

「ただいま」と「おかえり」は二つで一つなのかもしれない。こだまみたいに返ってくるその返事は、当たり前の光景なようでいて、実はものすごく奇跡みたいなことなのかも。その返事はきっと誰から返ってきても嬉しいもの。(たとえその返答者が自分自身であっても。)


でもやっぱり、誰かに「おかえり」って言ってもらえたり、私が「おかえり」って言ってあげるのも幸せなんだろうな。


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