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プログラミングを勉強した話(その1)

 私の世代でIT企業で技術系の仕事をしている人はあまりいないと思うが、私たちは学生時代も、卒業後に就職してからも、世の中にパソコンというものがなかった世代だから、当然と言えば当然かもしれない。
 会社で中堅になってからパソコンが普及したので、職場でパソコンを使う必要があるときは、自分で操作しないで若い社員にしてもらうことが多かったのではないだろうか。

 私の70代〜80代の友達には、メールもネットもできない人が何人もいる。
 入院記録に登場した明美さん、らんさん、恭子さん、あつこさんはメールもネットもできるが、できない人の方が多い。
 60代の友達でさえ、メールもネットも苦手という人が何人かいる。
 メールをしない人たちとの付き合いは従来通り手紙か電話で、私はできればメールにして欲しいのだが、Yさん同様、アカウントの設定はハードルが高いらしい。

 こんな世代の私が、どうやってIT業界で仕事をするようになったか、書いてみようと思う。

引っ越し」に書いたが、私は70年代半ばに大学を卒業してから、学習塾で教える仕事をしていた。
 生徒たちは学校が終わってから午後遅くに来るので、昼間はだいぶ時間があり、何かしたいと思っていた。

 70年代は英会話を習いに行ったり、スペイン愛好家のサークルに入ったりしていた。
 80年代に入ってからのこと。ある日、何か副業になりそうなものはないかと新聞の求人欄を見ていると、紙面の下4分の1ぐらいの大きなスペースに、
「午前中の家事が終わったら、コーヒーをいれてちょっと一息。キーボードを叩く……」
 といったキャッチコピーがあるのを見つけた。
 丸テーブルにキーボードと、湯気のあがるコーヒーカップが置かれたおしゃれなイラストが描いてあった。(正確には覚えていないが、そんな感じだった)

 キーボードというのが新鮮だった。
 その頃、NHKの教育テレビで、「プログラミング入門」だったか「BASIC入門」だったか、そんなタイトルの番組ができているのに気が付いていた。
 番組を見たことはなかったが、全く興味がないわけでもなかった。

 この求人広告の募集内容を聞こうと電話すると、説明会があるということで、予約して出掛けた。
 会場はどこだったか忘れたが、大きな部屋で、説明会に来た人は100人ほどいたように思う。
 見たところ20代〜40代の女性が多かったが、定年を過ぎたと思われる年配の白髪混じりの男性もいた。

 シャープからMZ-7というパソコンが出ているが、これを買った人に仕事をくれるというもので、確か7万円ぐらいだった。
 説明会に来た人のうち何人が買ったか知らないが、私は思い切って買った。

 このMZ-7については、現在ネット上にはMZ-700というのが写真も一緒に出ているが、私が買ったのはこんな立派なものではなかった。
 私が買ったのは、黒いキーボードにカセットをセットするデッキ部分と、カセットテープと同じくらいの小さなプロッタプリンタが付いただけのものだった。(プロッタプリンタについては後述する)
 ディスプレイもなく、テレビにつないで見るようになっていた。
 名称も私の記憶ではMZ-7(エムゼットセブン)だった。

 朝礼でこの話をしたら、Mさんもこのパソコンを知っていた。
「パソコンの第一号ですよ。MZ-700はそれの製品版だから」
 と言う。

 なんと、Mさんは、同時期に出たNECの同じようなパソコンを持っていたのだそうだ。
 私はNECでも同じようなものを出していたとは知らなかった。

 MZ-7を買った人には使い方を覚えるために講習会が用意されており、私も参加した。
 場所は新橋で、学校の教室かそれより少し広いぐらいの窓のない部屋に、横長の机がずらっと並び、それぞれの机にはディスプレイに接続したMZ-7が、間隔を開けて2台ずつ置かれていた。
 何かの倉庫を一時的に教室にしていたのかもしれない。

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