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籠の中の小鳥

世の中のすべてがわたしにささやいているように聞こえる。
ポンと、背中を押されているように感じるし、実際じぶんもそっちのほうがいいと、感じる場面が増えた。
そろそろ、一人になったほうがいいんじゃない?と。
幸せじゃないことに慣れてしまったのは、いつからなんだろうか。
家にいるのが気が重く、一緒に暮らしていて苦痛でしかないのに、どうにか変わらないで済む方を、一生懸命選んできた。
そろそろ、もう、いいんじゃない?と、世界がわたしにささやいている気がする。

夫はわたしのことを愛していない。
彼の興味は手のひらに収まる、スマートフォンの中。そこで出会う女の子たちの方がいいそうだ。
以前は妬いたりもしたが、今ではもう関わりたくない一心で、好きなようにしてもらっている。携帯はみないし、詮索もしない。
彼が求めているものが若さなら、わたしにはそれを与えることはできないし、幸せになってくれと、ぶっきらぼうに思うこともできる。

愛されたいだけなんだけど、叶わない願いだと知ってからは、わがままを言うこともなくなった。
幸いにも、友達には恵まれているから、話をきいてほしいときは電話することもできるし、わたしのことを好いてくれている人は、頻繫にご飯に連れて行ってくれる。

人肌に触れたいなと、思う。
そんな日はどうすればいいのか、途方に暮れる。
夫はわたしのことを愛していないから、小鳥の私は籠から飛び立たないといけないらしい。
世界がそう、ささやいているから。

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