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日本にはない、避妊用インプラントを入れてみた。

こんにちは、あんなです。
実は私、1年前に「避妊用インプラント」を入れました。これは日本では認可されていない避妊方法の一つです。今回は、私の経験をみなさんにシェアしたいと思います。日本にない避妊方法がどれだけあるか、女性の生き方の多様性をサポートすることができるか、そしてもし海外におられる方でインプラントを検討している方がいたら参考にしていただければと思います。

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世界には様々な避妊の方法がありますが、その多くは日本で認可を受けていません。日本で可能な避妊の方法はコンドーム、低容量ピル、IUD(ミレーナなど)の3種類ですが、海外では避妊注射、リング、シールなど、様々な種類があります。その中の一つで、日本ではまだ認可されていない避妊用インプラントをイギリスで入れました。

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インプラントとは、2cm型の棒状の器具を二の腕の下部に入れる避妊の方法で、一回で3年間避妊の効果を得ることができます。低容量ピルは毎日飲まなければいけないのに対し、インプラントは一回入れれば3年間何もしなくて良いため、今大変人気な避妊方法のチョイスになっています。もう一つの特徴は、その効果の高さです。コンドームの避妊率は一般的に82%ほどと言われています。ピルも高い避妊率が期待されますが、飲み忘れ等で失敗の確率が上がってしまいます。その点、インプラントは常に体内に入っているので飲み忘れ等の恐れがなく、99.5%以上、つまりほぼ完璧な避妊成功率が望めます。その他にも、ピルの場合は接種をやめてから元の排卵サイクルに戻るまで1〜2ヶ月かかるものの、インプラントは抜いてしまえばすぐにサイクルが戻るため、妊娠を希望する方はすぐにトライできるという利点もあります。

私は長年日本とアメリカで処方されピルを飲んでいたのですが、その副作用の一つである気分の落ち込みに悩まされてきました。日本では、女性が自主的にできる避妊方法がピル以外にIUDしかありません。IUDは膣内に器具を入れるものですが、痛みが伴うことも多く、経産婦の方に進められることが多いです。出産未経験者である私にはハードルが高いチョイスでした。

毎日薬を飲まなくて良い、膣内に器具を入れる必要がないインプラントは、私にとって理想な避妊方法でした。UKに来た今、試して見る他ないと思い、1年ほど前にインプラントを左腕の下部に入れました。

施術方法:

インプラントは二の腕の下部に小さな棒を挿入する方法で埋め込まれます。挿入部分に部分麻酔をしてから挿入するため、痛みはありません。ものの数分でインプラント挿入は終了しました。

事前に普段かかっている医師(General Practitioner)と相談し、インプラントが私にとって最善のチョイスであるかを話し合った後、近隣のセクシャルヘルスセンターを紹介されました。セクシャルヘルスセンターでは、セクシャルヘルスに関する施術が受けられる総合センターになっています。避妊以外にも、性病のチェックや、トランスジェンダーの方々のトランジショニングの相談なども行われています。

インプラントのプロセスで最も時間が掛かったのが事前の質問でした。「答えたくない質問があったり、不安になったりしたらすぐに言ってね。」と担当の方に言われて、これまでのセクシャルパートナーの数、恋愛対象の性別、性病・持病の有無などを聞かれました。様々な質問の中、「家庭内に不安を覚える人物はいるか」とも聞かれました。家庭内暴力があるかどうかを確認するための質問なのですが、女性の意思に反した避妊方法を無理やり求めるパートナーが少なくないらしく、本当にインプラント挿入が私の意思であるかどうかの確認でした。それらの質問に応答し、インプラント挿入に問題がないことを確認でき、私は晴れてインプラントを入れることができました。

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インプラントを入れた初日。(撮影:あんな)

インプラントを入れるときは部分麻酔で行うので痛みは感じないのですが、麻酔が取れてきたときに少し痛みを感じました。コロナワクチンを打った後くらいの痛みです。施術後24時間は濡らしてはいけないとのことで、その日はお風呂に入らず、そのまま就寝。替えのバンドエイドをもらったので、次の日にお風呂に入った後にそれを付け替えました。3日目には痛みは全くないくらいでした。

インプラントを入れて1年。私の体調は。

今年の2月でインプラントを入れて1年が経ちました。結論から言うと、非常に満足しています。インプラントを入れたことで、生理がほとんどこなくなりました。きても生理痛などもなく、数日で終わります。不正出血もたまにありますが、ピルを飲んでいた頃とそれは特に変わりません。生理痛やPMSに悩まされることもなく、毎日ピルを飲まなければいけない生活から開放されてとても快適です。インプラントを入れた二の腕部分は、よく触れば何となく棒状のものを感じることができますが、外からみたら全くわかりません。その部分に痛みや違和感を感じることは全くありません。

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インプラント1年後(撮影:あんな)

施術はタダ。

今回のインプラントの施術、入国時に国民健康保険分の料金を払っていたので(ビザ取得時には必須要件)費用はなんとタダでした。
UK国民や、私のような外国人でも入国時に国民健康保険の料金を払っていれば、リプロダクティブ・ヘルス関連を含む医療は無料なのです。

日本では、ピルも一定の条件を満たさなければ保険適用外で、条件を満たしていたとしても1シート(1ヶ月分)2000円から3000円かかります。IUDは全部で数万円かかってしまいます。それが、イギリスでは全て国民健康保険でカバーされているのです。

働き方やライフスタイルが多様化している昨今、避妊の方法に選択肢があることはとても重要です。私のように、ピルが体調に合わない人も少なくないでしょう。それに、毎日一定の時間に飲まなければならないピルは、負担が大きいです。かといって、IUDのように膣内に入れるタイプの避妊方法には抵抗がある人もいることが安易に想像できます。施術の頻度、痛み、挿入部分、避妊効果の継続期間など、避妊を希望する個々人にとってベストな選択肢があることで、クオリティオブライフも上がります。

現在日本では諸外国に比べて女性の自主的な避妊の普及率は低く、男性任せになってしまっています。その一つの要因は、選択肢の少なさにあるのではないでしょうか。国連が定めるTwelve Human Rights Key to Reproductive Rights(12のリプロダクティブ・ライツの項目)の中に、「科学的プロセスの利益を享受する権利」というものが定められています。海外で認可受けている避妊方法にアクセスできることは、人権の一部とも言えるのです。

日本では、避妊方法の選択肢の少なさに加えて、海外では薬局で安く手に入れることができるアフターピルが、未だ高額で、病院で処方をされなければ手に入れることができないなど、リプロダクティブ・ライツが後進的です。リプロダクティブ・ライツが認められることは、豊な生活を送るためにとても重要です。日本でもこれらの避妊方法がいち早く認可されることを強く希望します。

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日本で女性のリプロライツに関わる薬や治療法が認可されていない問題について、『なんでないのプロジェクト』さんが声を上げてくださっています。もしご興味がある方は、リンクをクリックしてみてください。

Twitter: @annaPHd9pj
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