晏子

物書き

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最近の記事

珈琲

ひとりでやると自由、進みはわるい。 皆んなでやると窮屈、ぐんと変わる。 人とかかわらず研究すれば、 それは発見。 仲間と学びあえば、それは発展。 コーヒーについて。 甘いんじゃないの?って 今更気づく。 私は焙煎したことがない。 サイフォンで淹れた事もない。 とやかく味わいを評価する立場じゃない、でも。 美味しいのはわかるのよ。 なぜかしら? 不味いのはもっとわかる。 これは鼻がいいから。 つきぬけたい。 coffeeに取り憑かれたように どっぷり。 coffeeに憑依さ

    • 消去

      好きな季節は? と聞かれて「季節の変わり目」と答える。ずるい!!と言い返された。 ん?なぜ?じゃあ聞くなよ。 私の人生の37年間は 夏が大嫌いだった。 それから、一変して 夏を恋しく 待ち遠しく感じるようになった。 日焼け止めを塗らずに歩く快感。 日傘も捨て、 帽子も手袋もしてた私が 短パン、ビーサンで生きる事になって10年以上たつ。 この先も、それは変わらないだろう。 緑のビーサンは7年履いてる。 裏ペランペランで 歩く度にピタんピタんと貧相な音がしており、今年さすがに新

      • 空港

        空港の記憶が切り刻まれてる。 確かに私たちはそこに行って 待ち合わせをしたり 別れたりした。 逢瀬の終盤、 飛び立つまえのひととき。 車の中で時間をつぶしてた。 窓を開けて何気ない会話をして クスッと笑ったり。 これが 最後になるかもしれないとは 互いに口に出さないようにして。 つぎはいつ会えるだとか、 何処へ行こうか、とか。 そういった約束はぜったいしなかった。心を置いてそこを離れる感じ。 たったひとつ、搭乗口でこっそりさらりとキスを交わす。 手を離して 私は彼が見えなく

        • アン

          「コーヒーのめない」 おっさんはそう言った。 「アン。俺コーヒーのめない」 あ、そう。 私は珈琲屋で働いていたから さほど驚かなかった。 コーヒー嫌いな人。のめない人。 たくさんいる。 お店ではコーヒーのめないんですけど、って言いながら のんでみたくて 豆を買いにくる女の子もいたから。 おっさんに珈琲をのませてあげよう! おっさんに逢いたい理由のひとつに 珈琲が加わった。 ミルクたっぷり沈めた ハンドドリップで リストレットで 甘めの。淹れてあげたい。 真っ赤なトランク

          しこつこ

          SMAPの中居くんがラジオで言ってたんだよ。好きな場所は?って聞かれて支笏湖って。 オレ、意外だなぁって思ってさ。 中居くんだよ? 支笏湖って。 支笏湖までの道が私たちのワクワクのはじまり。 離れた時間を埋めるために2人は出来るだけ恥ずかしさを伴わないよう、 目を合わせないで果てしなく喋る。 帰り道というと、 それはそれは墓場みたいな雰囲気になって。 スッとした瞬間に喧嘩になりそうな キリッキリに尖った空気で2人は黙りこむ。 支笏湖の思い出はそんなだ。 早く通り過ぎた

          しこつこ

          ずる

          小さな嘘は ずっとつき続けられるものだろうか? 嘘をつくとき人は深く考えたりしない。 咄嗟に勝手に口から滑らかに出てくる。 出たらあとは紐付けしていけばいい。 都合の良い流れで話せばいいだけ。 後から、あれ?何て言ったっけ?くらいの程度。気づくと私はしょっちゅう嘘をついてる。 オッサンにも嘘をついた。 だって良く思われたいから。 バツイチは言えるけど、 子供がいることは隠したかった。 何でだろう? 娘だけは聖域で私の唯一のタカラモノだから?子供を巻き込みたくなかったからか

          河童

          オッサンと出逢ってからの毎日は 毎日 1秒1秒 私のからだの細胞すべてが オッサンを想うことに集中していた。 次会えるのはいつだろう? そればっか考え それだけの為に生きてる。 あの夏 札幌で1日目を終えるころオッサンが言った。 「次の日からはどうしよう?って考えてたんだけど、温泉に行こうと思う。 アンとは、 ホテルとかじゃなくて、 こういう街じゃなくて、 暮らすような場所で過ごしたいと思っててさ。」 ふぅーん。 行こう行こう! その日、ワクワクして眠れなかった。 次の朝、

          下北

          世田谷。 仕事場は流行りのコーヒー店で 金持ち相手に珈琲を淹れてる。 整った照明の中 雑談しながら、 カラカラ音がでるような会話でお客を満足させてた。 芳しい珈琲の産地に 想いを巡らせながら 宙をさまよってるような生き方だ。 火曜日のクローズで、 どうしても30円合わなかった。 店長に報告するのが嫌で、 30円ポッケから出して足した。 これで帰れる…安いもんだわ。 翌昼、出勤するとザワッとした。 「ねぇ、お金合わないんだけど?知ってる?」 (くそ面倒) たかが、30円。

          さる

          初めてあったのは夏だった。 空港の水槽前で オッサンは魚ごしに私をみつけた。 肩に小さな猿🐒を乗せて 「よー、アン」と言った。 低音で体の芯にひびく声。 想像してた通りの。 そこから どんな会話をしてホテルまで行ったのか。 湖をこえ、 札幌の大通りをぬけた公園横にあるホテル。 部屋の窓辺に私をちょんと座らせて オッサンは はぁはぁ言いながら低音で吐き出した。 「パンスト穿いてきた? アンを想って、もう何回もしちゃったよ」 それからは 礼儀ただしく 挨拶を交わす感じで窓

          いぬ

          どこで出会ったんですか? その人と実際あったんですか? 何回もきかれる。 辿ればアプリなどない時代の。 いぬと名乗る男が私をみつけ、 私はいぬに目を留めた。 「あなたに興味があります」 それがキッカケだった。 永く濃く感じたが、 奇跡的な出逢いは6年ほど続いた。 てか、6年で終えた。 奇跡の出会いは 私が37歳、いぬは41歳の夏、8月22日。 私はいぬのことを「オッサン」と呼ぶことに決めた。愛をこめてオッサンと。 真っ赤なTシャツを着たオッサンの胸には TUEと真っ