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紙袋の中に詰まったもの

2月14日 バレンタインデー。
私は駅のホームの寒さに耐え、電車に乗り込んだ。

電車内の暖かい空気が冷えた体を包み込む。
シートへと腰を下ろし、左手にぶら下げていた紙袋を、膝の上へ置いた。中には、昨日徹夜して作った、チーズケーキとトリュフが入っている。

(暖かいな……)

ふと周りを見回すと、女の人のほとんどが大きな紙袋を膝の上に置いていた。

中にはきっと大切な人に渡す、何かが入っている。今日がバレンタインだから、ではなく、その人の表情と、大切そうに持つ紙袋から分かるのだ。

昨日の夜はきっと、日本で1番お菓子が作られた日で、今日はきっと、日本で1番お菓子が食べられる日だろうな。と、そんなことを考えながら、自分の膝で揺られるお菓子たちを、のぞき込んだ。

私の紙袋の中にも、周りの人の紙袋の中にも、誰かに渡すお菓子が入っている。

大切に大切に、崩れないように誰かの元へ運ぶ。
大切に大切に、自分の気持ちも運ぶ。

紙袋の中には、お菓子と一緒にそれぞれの気持ちが入っている。

そんな気がした。

そして私もまた、大切な人への気持ちを紙袋に詰め、零れないようにしっかりと抱きしめた。

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