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みえなくなった #2000字のホラー

「スズカ、大丈夫?」

「うん、問題ないよ。」


スズカが全盲になってから数ヶ月。
白杖や点字を用いた生活、聴覚を研ぎ澄ませることにも慣れてきた頃。

亜寿佳(あすか)は嫌がることなく面倒を見てくれる。

「ごめんね、亜寿佳。うちらのせいで。」

「いいんだよ。気にしないで。2人のせいじゃないよ。」

亜寿佳はスズカの他に、きいの世話もしている。
きいは先日、半側空間無視の状態になってしまった。
スズカが全盲になった同日同時刻に。


「スズカ。きいの家、一緒に行く?」
「うん。行きたい!やっぱ3人一緒がいい!」

幼いころから3人は一緒だった。つまるところ3人は幼なじみという関係だ。

3人の家は互いの家から目と鼻の先である。
皆、「お隣さん」という関係だ。


「きい、来たよ!」
「あ、スズカ。やっぱり一人じゃさみしい?」
「亜寿佳もいるよ。」
「あ、ごめん。見えないから…………」

きいは亜寿佳に謝罪すると、いつも通り2人を自室に上げ、雑談が始まった。

しかし、その日はいつもより重い雰囲気が漂っていた。

「ごめんね…………」
「見えなくなってから、亜寿佳には迷惑かけてばっかだし…………」

「気にしないで。」
亜寿佳はそう返すばかり。
それが、スズカときいをますます不安にさせたのだろう。

「本当にごめん!」
「『半年前のあれ』みたいに、うちらが消えれば…」

「そんなことないよ。私は…2人がいなくなったらどう生きていけばいいかわからないよ……」

「「………………」」

どのくらいの沈黙があっただろうか。

「あたし…帰るね……」
スズカが切り出した。
「あ、スズカ!私も……………」

亜寿佳が止める間もなく、スズカはきいの家を出た。




瞬間、衝撃音が響いた。

亜寿佳ときいは嫌な予感がして、急いで外に出た。





嫌な予感は的中した。

スズカが暴走車に轢かれた。
車はスズカの家にめり込んでいた。



救急隊が到着したが、時すでに遅かったらしい。








スズカの家族も、家の下敷きになって帰らぬ人になった。










数日後。






きいが自殺しようとした。

幸い未遂だった。










その後。

きいは自暴自棄になり、自損行為を頻繁にするようになった。




亜寿佳はただただ眺めることしかできなかった。




かけるべき言葉もわからぬまま。



















何ヶ月たったかもわからないある日。







きいが脳死状態になった。




亜寿佳は延命を懇願した


しかし、願いは叶わなかった。









きいの臓器はどこか別の人のところへ行ってしまった。






亜寿佳は、見えなくなった。





亜寿佳……「明日香」はただただ願うことしかできなかった。








2人が……スズカ……「鈴鹿」ときい……「紀伊」が……
見えなくなる前に戻りたいと。








「みえ」なくなる前に戻りたいと。


#2000字のホラー

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