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四ツ葉荘 第3話 海と祈

前回の補足


ゆらさんが交代人格だと知ってはや1週間。
私は主人格の都さんとも少しなら話せるようになった。

どうやら普段はゆらさんが出ているらしい。
さっぱりして裏表のない性格故、多くの人から親しみやすいようだ。
都さんはデリケートな性格で、いろいろなことが心配になってしまうようだ。
いろいろなことに対して過剰に反応してしまい、人間不信であるから、らしい。
ゆらさんは過剰に反応しすぎないよう、都さんを守る役目らしい。

だが、それでも腑に落ちないところがある









海と祈 第1節

廊下を歩いていると、話し声が聞こえてきた。
談話室のようだ。
気付かれぬよう慎重にドアを開けると、窓辺に2人の女性がいた。

海さんと祈さんだ。

私は耳を澄ます。

「祈ももうちょっと自信もっていいんじゃない?」
「…………………」
「それでも立派だよ」
「…………………?」
「そうだよ。」
「…………………^^」

後ろ姿だが、祈さんがほほ笑んだことは私にもわかった。

「あれ?秋葉?」
「あ…う…海さん…祈さんも……お邪魔しちゃいました……?」
「全然!祈も気にしてないし!」
「海さん、ちょっといいですか?」
「どしたの?」
「祈さんの言葉、わかるんですか?」
「え?祈はちゃんと喋ってるよ。ね?」
「…………………」
「すみません……聞こえません……」

「そっか……祈の言葉、聞こえないか……」
「聞こえる人って限られてるんですか?」
「……………………………………………………」
「まだ、秋葉とそんなに仲良くないからかもって言ってる」
「そうですか……祈さんに心を開いてもらうコツって何ですか?」
「………………………………………………………………」
「まだまだ出会ったばかりだから気軽に話しかけないでって言ってる。あと、観察して大丈夫だと思ったら話に行くってさ。」


はぁ…………………祈さんは結構ガードが堅いぞ。
そういえば、海さんはいつから言葉が分かるんだろう?


「海さんはいつから分かったんですか?」
「え?ちっちゃいころからだよ?」
「............................................…」
「運命共同体に近いものがあるって言ってる。」


運命共同体、か。




どうやら、海さんと祈さんにも何かあるようだ。

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