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第2回お題文学投稿企画「8月32日」

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【文学批評】一人の時間を「読む」人の横顔(yoさん『一人の時間』【お題文学企画「8月32日」】)

【文学批評】一人の時間を「読む」人の横顔(yoさん『一人の時間』【お題文学企画「8月32日」】)

yoさん『一人の時間』

齋藤圭介 評

 現実に、夏はもう終わってしまったらしい。それでも8月32日の誤謬世界の旅を、季節を忘れながらもう少し続けてみたい。静花さんの紡ぎ出した物語から「身体性」や「季節感」といったキーワードを抱えながら、「二人の時間」から「一人の時間」へ、わたしはわたし自身を移動させようと思う。重力や時間をある程度は歪ませることのできる、言葉の連なりという転送方法で。どうやら8

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【文学批評】この世界にいない「きみ」の言葉にこそ

(山口静花さん『8月32日』【お題文学企画「8月32日」】)

【文学批評】この世界にいない「きみ」の言葉にこそ (山口静花さん『8月32日』【お題文学企画「8月32日」】)

山口静花さん『8月32日』

齋藤圭介 評

 X月X日という揺るぎがたいフォーマットがあって、そこに当てはめられるべき数字が当てはめられない場合にはわれわれの文字情報を司る機能は認識のエラーを起こす。それらをすぐさま排除しようとするし、修正しようともする。13月4日も、4月56日も、0月1日も。そしてもちろん、8月32日も。
 8月の、32日。さんじゅう、に、にちーーいじらしい「ひっかけ」のため

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【文学批評】一歩踏み込む勇気(ていさん『そういう話』【お題文学企画「8月32日」】)

【文学批評】一歩踏み込む勇気(ていさん『そういう話』【お題文学企画「8月32日」】)

ていさん『そういう話』yo 評周知の事実を自分だけが知らないという疎外感は、身に覚えのある人も多いのではないだろうか。世界に1人だけしかいないかのような孤独を感じるものである。それも、8月32日の新設などという、国の一大事である。その疎外感たるや非常に大きなものだろう。「誰もが皆そういう話だったじゃないか」と当然のようにふるまう中、自分だけが知らない日がやってくるとき、「私」はどうなってしまうのだ

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