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まずはこれ食べて

オーデイブルを聴くことが日常の楽しみになりはや1年経とうと
している。テレビをつけると戦争や事件のやるせない社会のありように
目を背けたくなるのだ。
そんな時にオーディブルで物語に没入できる世界は
今何より楽しみで、頭の中のイメージや、登場人物の心情などに
思いを馳せたり、いろんな世界をみることができる。

原田ひ香さんの作品は、日常の一コマがありありとイメージできて
身近に感じる登場人物達がなんとも愛おしい。

今回は原田ひ香さんの作品を聴き始めての小説3作目
まずはこれ食べてという題名で、食べ物の話なのかと
思って聞き進めていくうちに
ご飯や、家を整えていくことは
生きていく上で本当に大事なことなんだなと
思わずにはいられない。

社会に出て一生懸命働く。いろんな人間関係で
心が疲れ切っている時に
美味しい料理を作ってくれる人がいて。
大人になり、母となり、日々食事作りに追われている自分は
誰かが作ってくれる食事が本当にありがたいし
とても美味しく感謝していただける。
親と暮らしていた時は、作ってくれる母の料理は当たり前と
思っていたから、今日のご飯何?えーそんな気分じゃなかったなど
作ってくれる人の気持ちを無視した発言してたから
今娘にお返しされている気分である。

全て自分の弱さなど曝け出せない悶々とした日々を
送る登場人物達も
会社に来た家政婦の美味しい料理で心をほぐされ
お互いが感じていた重い心の荷物を一つ一つ
解いていく心情様子の表現が素晴らしかった。

ここで、同じ会社設立のメンバーのターンごとに
物語が進んでいくのだが、
やはり人のみる世界は100人100通りなんだと
思う。それぞれの育った環境や思想感、経験値などが
自分のみる価値観になっていくのだなーと
当たり前だけど、そんな中でうまく関係を
作っていくのは大変なんだなと思わずにはいられない。
食事を一緒に食べることは
相手のことを認め合える心の余白を作ることなのかも
しれないなと聞きながら感じた。
家政婦の生い立ちも、切ないんだけど
本人が受け入れてることで清々しく感じた。
自分の置かれた環境や境遇を嘆いてばかりでなく
受け入れた人はこんなにも強くしなやかで
いられるのかと感じた。
この物語を通して
誰かを変えたり自分の都合の良いように
扱うことで自分の存在価値を見出そうとする人よりも
自分をすべて受け入れその中で生きると
覚悟した人の方が、より魅力ある人物になっていくのだと
思った。
とにかく食べ物の描写表現が美味しいそうで
そんな想像をしてるだけで
心が和んでくる小説です。
ぜひ、聞いてみてください。

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