今夜は月が嫌いだよ
好きな人がほしい。
彼氏がいるのにそんなこと言ったら、世間は浮気だとかわたしのことを責めるのだろうか。
クリープハイプのライブに行った。全部ぬるりと刺さって、やっぱり自分の一部なんだと知った。
いろんなことを考えた。
直前に友達と話した彼氏のこと、過去の恋愛。
高校の時、初恋の人が所属していたバンドは、よくクリープの曲をコピーしていた。
初めは特別好きなバンドな訳ではなかったし、きっかけは全く見当もつかない。いつのまにかわたしの心の中心部にいて、いつも住み着いていた。まるで初恋の人みたいだった。
あれから何年も経った。時間ってすごい。
とっくに好きなんて気持ちは消えて、気づいたら彼の存在なんか忘れていた。彼との思い出は、何人もの別の人で上書きされて、今の彼氏と付き合った。クリープの曲を聴いても、彼の好きだったアイドルを見ても、彼と行った場所に今の彼氏と行っても何も思わないぐらい、わたしの中に彼はどこにもいなかった。
今の彼氏と付き合って、これまでの誰といた時よりも楽しいと思った。この人は、今まで好きになった人とは違うと思った。だから、たくさん初めてを今の彼氏にあげた。
でも最近、彼氏の態度から気持ちが伝わってこない。わたしは付き合った時よりも、あなたのこと大切に思い始めていたのに。
寂しい。
何度も何度も、寂しさを自分で埋める努力をした。友達、趣味、勉強、バイト。
その中でも一番効果があったけど、一番寂しくさせたのは男友達の存在だった。その他はすべてその場しのぎのごまかしにしかならなかった。
仲良い男友達が言ってくれる何気ない一言、さりげない気遣いが嬉しかった。彼氏にもそんなこと言われたことないのに。彼氏にもそんなことしてもらったことないのに。でも、いくら彼と毎日を一緒に過ごしていたって、男友達たちが優しくしてくれたって、それは所詮、彼氏に愛して欲しかったのに、愛されなかった分の埋め合わせにしかならなかった。彼氏にしか埋められない穴があった。それが辛くて、夜中に何度も泣いた。
言いたいことを言えないまま、いろんなことが積み重なって、気づいた時には彼氏のことが好きかわからなくなっていた。
今までのわたしなら、やっぱり彼氏に愛して欲しいと願っていたのだろう。でも今のわたしにはまだ相手に期待できるほどの体力は残っていなかった。私のこと大切にしてくれる人にしか向き合おうと思えなかった。
別に好きな人ほしいな。
ライブの会場、なぜか別の人物を探していた。
あの当時の好きだった、初恋の人。
家に帰ってからも彼のことばかり考えていた。
久しぶりに連絡がとりたい。話したい。
当然現れた彼の存在は、別に好きなんて気持ちじゃないのだろう。
でも、絶対に壊せない関係があるとしたら、私は彼を思い出してしまう。彼は、わたしの絶対的な依存先で、わたしの中の一番弱いわたしの投影で、永遠に埋まらない穴を塞ぐ最後の手段だから。
もはや彼は、わたしが作り上げた幻想でしかないのかもしれない。でもその存在は、もう決して消すことはできないのだと、わたしはそう受け入れるしかなかった。
クリープのライブ行ったら、〇〇のこと思い出しちゃった笑
そう打ったLINEの文面は何日も送信できないまま、なにも無かったことにした。だって、わたし彼氏いるもんね。
2022.7.22
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