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わたしの人生ドラマ #推し短歌

韓国ドラマに魅了されて、5年ほど。作り込まれた世界観と映像美はさることながら、視聴者を巻き込んでゆく精巧な台本や、俳優たちの緻密な演技には、いつも感嘆させられる。

とは言っても、私は、新しいドラマを次から次へと見まくるタイプではない。心に深く残ったドラマをおりに触れて見返すのが好きな方だ。何度も見返すうちに、いつのまにか、ドラマの登場人物は私の心の中に住むようになる。落ち込んでいたら優しい言葉をそっと耳打ちしてくれるし、時には勢いよく背中を叩いて叱咤激励してくれる。そうやって、いつしか人生を共にするようになる。

韓国では、自分にとってのそういう印象深いドラマのことを「人生ドラマ」と呼ぶそうだ。人生ドラマが増えるほど、私の味方をしてくれる友だちが、心の中に増えていくような気がする。ゆっくり、自分のペースで、大切に集めていきたいな。今回はそんな、思い入れあふれる推しドラマの短歌。

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ため息の日に行く画面の向こう側밥《めし》たべている私も生きる

밥(パプ)は韓国語でご飯のこと。韓国ドラマを見ていると、とにかくご飯を食べているシーンが多いことに気づく。実際、韓国には、「ご飯食べた?」という挨拶がある。それだけ食を大切にする文化なのだと思う。画面の向こうで、彼らはいつも食べている。どんなに悲しいドラマでも、やるせないことがあっても、食べなくちゃ私たちは生きていけないのだ。そして、そんなどうしようもない状況でも食べてさえいれば、生きてゆけるのだ。食事をするひとの姿に、私も生きてゆこう、と、いつの間にか思えている。
おすすめは「刑務所のルールブック」。あゝ人生、と空を仰ぎたくなります。

寄せたまゆ光るめがねのその奥に隠した涙あなたは希望

屈託のないイケメンとか、誰にでも優しいヒーローより、一癖ある変わり者とかひねくれ者を好きになってしまう。不器用だけれど、本当は誰よりもあたたかくてまっすぐ、そんな人。誰かに見せびらかすためでない、ただ自分の信念と目線の先にある大切なもののためだけの優しさが、きっとたくさんの人の希望になっている。
一番好きなドラマ「賢い医師生活」は全人類見てほしい。めがねをかけた無愛想な胸部外科医が私の最推しです。

彫刻の鼻やくびれやヒールより憧れている泥のスニーカー

ヒロインにも、いろんなタイプがあるけれど。汚れたくつでも、自分の足でしっかり歩いていく強い女性は、何よりも美しい。ありのままの自分で、自分が愛せる自分で、コートをひるがえして。そんなヒロインに明日の自分を重ねる。私も自分の色を信じて歩きたい。
おすすめは「それでも僕らは走り続ける」、登場する女性たち全てが強く、正直で、潔くて、すごく好き。映画翻訳を題材にしているだけあって、セリフの掛け合いの美しさも格別なのです。

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推し短歌にあやかって、ひとりで盛り上がってしまった。みなさんの心に刻まれたドラマはなんですか。よかったら教えてください。

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(推し短歌、こちらにも掲載しています)


貴重な時間を使ってここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。