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白いジャンパー:写真の部屋

子供の頃に、大人がキッチリと嘘をついたのを初めて見た。それはテレビ番組を作る人たちだった。

細かい部分の記憶が定かではないのが申し訳ないんだけど、たぶん小学校3年生くらいの頃、横浜のある公共施設で遊んでいたらテレビ番組の取材が来た。その場にいた子供数人が遊んでいる姿を撮らせてくれと言われ、展示ブースの前に集められた。まずこの時点で「やらせ」なんだけどね。

テレビカメラを持ったおっさんが「もっと、右、もっとくっついて」などと指示を出す。そこにひとり、障害を持った小学生がいた。おっさんは彼に向かって、「黒いカーディガンのきみ、服の色が暗いから外れて」と言い、彼はピョコピョコ歩きながらその場を離れた。

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俺たちはなんとなく変な気持ちになったが、誰かが、「カーディガンを脱げばいいじゃん」と彼に声をかけた。「白いジャンパーが向こうにあるから取ってくる」と、彼がカメラのおっさんに言うと、ディレクターのような人が「そうだね、白ならいいね」と言った。

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写真の部屋

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。