見出し画像

強迫観念から脱出する:写真の部屋

「どんな写真を撮ればいいのかわからないんです」というのを聞くと、不思議に思います。写真はそこで見たモノをただ撮ればいいんですから、どんな写真が撮りたいかはシャッターを押して撮る瞬間までわかりませんし、どこかに出かけるならそこに行くまでわかりません。初心者向けの教えでは「テーマを決めましょう」などと言うようですが、それらのアドバイスが生み出す強迫観念なのではないかと感じます。

どんな写真も自分の写真。やるべきことをあらかじめ決めて自縄自縛になると世界を見つめる目がひとつになってしまいます。テーマを決めなければ、統一感を出さなければ、という短絡的でマーケティング的なアドバイスには聞く耳を持たなくて大丈夫です。ああ、この人は今日、キャンプに行って湖を撮ったり、リスを撮ったりしているんだな。昨日は新宿で撮っていたな、スタジオで手を怪我していたな、でいいのです。

人間の眼はいつでも、目の前にあるモノを忠実に映し続けています。好きなモノしか見えていないわけではありません。カメラの理想は眼と同じになることで、すべてを平等に捉えることです。目撃して撮った中から「いい写真だ」と思うカットだけをセレクトして抜き出すと「編集」が始まり、ここにも写真家の個性が出ます。見て、選んで、撮影して、セレクトして、他人に見せる。この5段階で、最初に「何を撮ればいいのか」と悩む必要はまったくありません。

だが、しかし!

ここから先は

546字

写真の部屋

¥500 / 月

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。