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反社との仕事:Anizine

「もう時効ですから書きますけど」この言葉が使えるようになるだけでも年齢を重ねる価値はあると思っています。

もう時効ですから書きますけど、数十年前、知人からCMの仕事をして欲しいと頼まれました。その頃の私はプロダクションの社員としてCMの仕事をしていたのですが、会社を通さない、いわゆる『闇営業』です。

知人に呼ばれて仕事の内容を聞くと、その人の地元の企業なのだと言いますが、言葉の端々に水商売っぽい香りが漂っていることに私のトリュフ豚の鼻が気づきました。彼が持って来た参考となるCMのトーンとしてはイメージ的な企業広告だったので、それならまあいいかと思って引き受けました。

後日、企画コンテを持って、ある都市に向かいます。新幹線を降りたところにはストレッチの黒いメルセデスが停まっており、後部座席のドアを開けて待っている若い男がいました。その瞬間「もう完全にアウトやな」と観念しました。

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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。