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くだらない韻:Anizine

「昨日は午前中から夜まで、デスクを離れないで本の原稿を書いていたよ。まだ目がチカチカする」
 「おお、おつかれ」
「流れがあるからさ、途中でやめられないんだよ。一気に読んだときに違和感がないかを検証するために毎回最初から最後まで読むことになる」
 「そうかそうか、おつかれ」
「おつかれが軽いよね」
 「他人の疲れで飲む栄養ドリンクなし、っていう諺があるよね」
「ないよ、そんな諺」
 「なかったか、おつかれ」
「不思議なことに、何度書き直してもいつも直すところが見つかるんだよね」
 「そういうもんだろ。推敲というのは」
「推敲とかいうと立派な本みたいに思われるからやめてくれよ」
 「他人の推敲にチカチカする目なし、って」


「ないよ。しかし諺独特のあの言い回しって、いいよな」
 「名言もいいよ。英語の場合は特に韻を踏むからグッとくる」
「そうだな。韻を踏もうとすると、極端に変な言葉のチョイスが生まれるから、あの強引さもいいんだよね」
 「むりやり持って来た、あのムードな」
「そう。日常的にそんな言葉は使わないだろうというやつ」
 「ラップというのは脚韻がメインだけど、頭韻の心地よさもあるよね」
「ある。ミッキーマウス、ドナルドダック、みたいな」
 「わざと科学的に聞き心地がいい感じにしてるんだよな」
「勝 海舟もそうだな」
 「うん。そろそろ本題に入るよ」

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525字

Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。