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雨宮まみさん:写真の部屋

この本を読んだある人から「あのお話に出てくる『写真家』って、アニさんのことじゃないですか」と聞かれました。

この本の中の一編には、私がこのポートレートを撮影した日のエピソードが出てきます。

去年のある日、2016年に亡くなった作家、雨宮まみさんの写真を貸して欲しいと出版社から連絡がきました。彼女はもうこの世にはいませんが、これから出版される『40歳がくる!』という書籍に使うとのことでした。モノクロの写真を渡すと、それは表紙に使われていました。

このエッセイは初出時に読んだ記憶があるのですが、細かいところはすっかり忘れていました。まみさんが写真を残したいという気持ちになって、人づてに私を選んでくれたこと、初対面で撮影した日の様子、さらにそこから別の人に縁が繋がった話まで。そうだったなあ、と自分のことなのに他人事にも感じ、まるでフィクションのように読みました。

作家と会うときには気をつけなければいけません。いつどんな作品に自分のことを書かれてしまうかわからないからです。冗談のようにも聞こえますが、多くの小説には実体験のパーツが散りばめられ、隠されているものです。それは当人同士にしかわからないささいなことかもしれませんが、その場にいた人には絶対に「あのことだ」とわかります。

その撮影がきっかけで友人になり、『自信のない部屋へようこそ』では、まみさんの集めた小物や家具などの撮影を依頼されました。この日は真夏だった記憶があります。



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写真の部屋

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人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。