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PBデザイン:Anizine

本当は『PDLB』で書くべき内容なのかも知れないけど、あまり高級な話題じゃないからこっちに書くことにする。

「あのコンビニのパッケージをどう思うか」と、最近よく話を聞くPBのデザインについて聞かれた。結論から言えば、俺はまるで興味がないので「まるで興味がない」と答えておいた。

ブランディングやマーケティングは、パッケージのデザインがいいとか悪いとかで決められる簡単な問題ではない。デザインがブランディングに関わる場合(本当は内包しているんだけど)、それだけが突破口になることは少ない。理由は受け手に「デザインの素養がないから」だと思っている。

デザインの素人が言う「感想」は、批評でも提言でもない。

そう言うと「買うのはデザインの素人である消費者じゃないか」と言われるんだけど、まったく別問題。次元の違うふたつの問題を混ぜたらいけない。デザインには「あるべき姿」と「求められる姿」があって、そのどちらを提示するか、選ぶかは素養の問題だ。なぜ、女性モノの家電はピンク色で花柄で丸っこいデザインなのか。売っているから使うのか。それとも売って欲しいと求めているのか。

ブランディング・デザインの一番の武器は見た目のデザインではなく「時間」である。何百年も同じ見え方をしているものは認知(Recognition)の速度が速い。この英語は別に憶える必要はないが、英語でいうRecognitionは、日本語での認知や認識とは微妙にニュアンスが違うので併記しておいた。

一面にスカイブルーがある広告はTiffanyだとわかる。ショッピングバッグがオレンジならHermesだとわかる。そういうのがブランドだ。だからコンビニのような場所で短期的に変わっていくラインナップを俺はブランディングだとは思っていない。それを企業のコンセプト、ブランディングとして成功させたのはただひとつ「無印良品」だけだ。

パッケージだけにとどまらず、世の中に流通する商品としての問題解決をパッケージに書くというアクロバティックな方法を、シンプルな統一性のあるスタイルでデザインした。そのインテリジェンスが企業理念として消費者に受け入れられたわけで、「カタチが揃っていません」という表記を初めて見たときは誰もが衝撃を受けたはずだ。

そのチカラが大きかったので、「パッケージに写真もついていないから中身がわかりにくいし、可愛くない」なんて感想はどこからも出なかったし、出たとしてもそれを言う人はそもそも「客」ではないから無視していい。

重要なのはここの無視していい客の切り分けで、「コンビニという場所はすべての人に開かれているから、すべての人に好かれるデザインであるべき」だと思うから、もうブランディングは機能しなくなる。

企業理念をデザインという包装紙で包んだモノが、文字通りパッケージデザイン。そのひとつとしてMONOPRIXの例がある。MONOPRIXはフランスのどこにでもある庶民的なスーパーマーケットだけど、そのPBデザインは素晴らしい。「デザインとは計画である」という好例。ブランディングやマーケティングをしている人なら、確実に現場で見ているはずだと思うけど、テレビのCMにも、なんとパッケージデザインをテーマにしたモノがある。

パッケージデザインがこんなラブストーリーになるブランドが日本にあるとは思えない。受け手の素養とは言ったが、作り手の素養も大きく違うのだ。

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これがサイトのデザインで、

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これらが商品のパッケージ。いわゆる「わかりやすさ」「シズル」はどこにもない。デザインが洗練されてクールだという話ではなく「我が社はこれを自分たちの顔として選んだから、よろしく」という態度の問題である。

日本人の観光客はここのエコバッグや保冷バッグなどをお土産のように買って行く。その例で言えばハロッズなどの流れから、紀伊國屋のエコバッグだけは皆が買うモノとして存在している。AEONと書いているエコバッグをハロッズの代わりに使っている人は見たことがない。

デザイナーの病気として、シンプルに統一性を持たせて格好良く、という自己満足が前に出ることがある。それの善悪なんかに答えはなくて、企業の顔として愛されながら機能すればいい。それだけのことだ。

今回は「もう質問しないで」という意味を込めて無料公開とします。

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。