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太陽はひとつ:写真の部屋

ギャラリーで一枚が数十万ユーロで売られている作品ならまだしも、私たちは仕事で写真を撮っていますからそれに応じた着地点というものがあります。またあえて極端なことを言ってしまえば、雑誌の1ページに載る5万円程度のギャラの仕事と、大きなプロジェクトで撮影する百万円から一千万円の仕事を比較しても、何も「やること」は変わりません。自分が普段使っているカメラとレンズで、いつもと同じようにシャッターを切るだけです。

大きなプロジェクトでは関わる人も多く人件費などの経費は莫大にかかりますが、写真家がやるべきことは同じです。何もせずに自然光で撮ろうが、巨大なセットを作って、特別な衣装を作って、数十灯のストロボを使っても、できあがった写真が人に与える印象に差はなく、目的と着地点が違うだけです。

あるとき、私の撮影を若い写真学校の生徒が見学に来たことがありました。彼がスタジオでライティングを見て言ったのは「あまりたくさんストロボを使わないんですね」という言葉でした。その時は1灯だけのビューティ・ディッシュのライティングでしたから拍子抜けしたのだと思います。プロフェッショナルはたくさんの照明機材を使うものだという思い込みなのでしょう。たとえ大きなスタジオであっても、人物をアップで撮るのであればそれほど多くのライトを使う必要はありません。

「太陽はひとつ」

という写真に関する言葉があります。

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写真の部屋

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人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。