見出し画像

情報量とシンプルさ:写真の部屋(無料記事)

いい写真はじっと見てしまう。その時間の長さは写真の何をあらわしているのか。いつもそれを考えています。

広告のビジュアルなどではいかに情報を減らして、歩きながらチラッと見るだけの「数秒間で印象に残る尖った写真」を撮ることを意識します。シンプルであることはとても繊細で大切な感覚で、ミニマムさと強さを両立できないと、単にふわふわした目立たないものになります。

雑誌や写真集などで気に入った写真が大きなポスターになっていると、それほどでもないと不思議に感じることがあります。見ているこちらの気持ちが違うからです。「サイズや目的なんかで変わるのはいい写真じゃない。いいものはいいに決まっている」という単純な話ではありません。いかにそういう精神論的で安易な解決をせず、丁寧に考える癖をつけるかが大事だと思っています。

雑誌とビルボードの違いはやはり眺める距離と時間でしょう。顔がくっつくくらい近くで、手にとって数分眺められる写真には情報量が必要です。デジタルカメラの画素数が巨大になっているのはある意味不要であると言えるんですが、情報量勝負の場合だけはプラスに働きます。先日N.Y.のビルの上からマンハッタンを撮影した写真を見ましたが、その巨大な写真をディスプレイ上でどんどん拡大していくと、どこまでも精密に写っていることがわかります。

写真は時間を止めますから、止まった時間を細部まで心ゆくまで見ることができます。この手のものを昔は8X10などの大判カメラで撮っていたんですが、今ではデジカメを使えばそれに匹敵するほどの解像力で撮ることが簡単にできます。

画像1

多くの要素がたくさん並んでいると飽きません。

画像2

無駄なモノがたくさん映り込んでいる方が楽しいのです。

画像3

細部の複雑さは写っているとしても、その場にシンプルに何かが置いてあるというのは広告写真の基本です。

伝えたいことを感じさせることが大事なのではなくて、それ以外の余計なことを考えさせないような絵作りが大切なわけです。ここ重要です。

初心者が撮ると背景に不用意なシワがあったり光の破綻があったりして、気持ちがそちらに行き、肝心の被写体よりもそればかりが気になってしまいます。

画像4

人間の顔だと、まず目が行くのは「目」ですね。この写真では唇の持っている情報量さえ消してしまいました。

画像5

別に広告写真を撮ることを目標としていない人が広告のような写真を撮る必要はありませんけど、自分が撮っている写真がどういう意味でそのような要素の集まりで撮られているのかは自分で理解している必要はあります。

なんとなくこうなりました、ではダメなのです。

定期購読マガジン「写真の部屋」https://note.com/aniwatanabe/m/mafe39aeac0ea

ここから先は

0字

写真の部屋

¥500 / 月

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。