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運がいいだけ。:Anizine

俺は自分の能力を聞かれたら、だいたいこう答えている。運も実力のうちなんてことも言われるが、俺のは実力を遙かに超える運で、「過運」という新しい言葉を作ってもいいと思えるほどだ。

何気なく鼻歌気分で歩いてきたここまでの道には、実はたくさんの死に至る深い落とし穴があって、それが見事なまでに俺の歩幅とズレていただけのことだと思っている。

だからそこですんなりと死んでいて「ゲームオーバー」だった可能性もあるのだと思えば、今生きていることが過分な幸福だと感じられる。過幸だ。過運による過幸を手にしてきたことは、ある種の原始的な宗教観をもたらした。ギャンブル観と言い換えてもいい。

数千枚のコインの元手を準備してカジノに来ても当然負ける人はいる。それがギャンブルだ。でも俺は、拾った一枚のコインしか持っていないのにカジノのスロットマシーンでたまたま財産ができたような経験しかしていない。

よく知られた古いカジノ・ジョークに、

カジノで負けない方法はただひとつ。
飛行機がラスベガスの空港に着いた瞬間に
プロペラに頭を突っ込むことだ。

というのがある。どんなギャンブルでも全戦全勝はなく、いつかは負ける。ギャンブルで大事なのは勝ち方ではなく、「勝っているときに辞める」ことだ。勝っている人はもっと勝とうとして負け、負けている人は負けを取り戻そうとしてさらに負ける。このジョークはつまり、最初からやらなければ負けないで済むと言っている。

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俺の日常はギャンブルだったから、実際のギャンブルはまったくやらない。自分という、騎手かボートレーサーか競輪選手かわからないが、そいつに賭けているから、勝ち負けはすべて自分の責任だ。他人や馬に運命を任せるなんて恐ろしいことは想像もできない。

という長い前置きのあとに来るのは、たぶん「ギャンブルに勝つ方法」だと思うんだけど、ここから先はインチキなFX投資法みたいなサイトと同じで、有料ってことになるよな。

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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。