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付加価値型と記録型:写真の部屋

自分がなぜ写真を撮っているのかを考えています。

ただただ撮るのが楽しいからですが、それだと趣味ということになります。私は趣味が好きではありません。そういう感覚も珍しいと思うんですが、何かをするときに趣味にとどめておく「消費行動」に興味が持てないのです。かなり正確な説明が必要だと思いますが、たとえばギターを趣味で弾くことに惹かれません。どうせやるならドームでコンサートをしたいし、それができないことを認めたくないのです。

ですから写真を撮るなら自分で満足するだけの趣味ではなく、仕事にしたいと思いました。理由は簡単で、仕事をした方が趣味よりも世界が広がるからです。「珍しい感覚」と書いたように、もちろん趣味で撮るのが楽しい大部分の人のことは否定しません。これは仕事に対する感覚の違いかもしれませんが、働いて収入を得るなら好きなことをした方が楽しいだろう、という単純過ぎる信念です。写真を撮るのが好きで、それをすることで報酬を得て生きていける。これほどいいことはありません。

今は誰でもデジタルカメラを買いに行けば写真は撮れます。ヨドバシカメラでNikonのZ9でも買って「私はカメラマンです」と名乗ればそれでカメラマンになれます。フォーミュラカーとは違って、Z9はお金さえ払えば誰にでも買うことができる、ここが他の仕事とは違うところです。プロフェッショナルもアマチュアとまったく同じ量販店で売っているカメラを仕事の道具として使っているので機材のコンディションは同じということになります。

ではなぜプロフェッショナルは同じカメラを使って写真を撮ると報酬がもらえるのでしょうか。それは「写真を撮る能力」にお金が支払われているからで、その能力は昨日同じカメラを買った人とは一線を画しています。写真を撮る能力とは何かと言えば、広告なら商品が売れることです。写真ビジネスには種類があって、大きく分けると三つ。一つは商品もしくは売るためのものに付加価値をつける仕事です。もう一つは写真そのものを作品として売る仕事、もう一つが記録する仕事です。

写真そのものを売る仕事は特殊なアートの分野であり、画家と同じですからここでは省きます。現在の日本でそういった活動だけで食べていけている人は10人にも満たないはずです。食べていけるとは、家賃や光熱費が払えるということではありません。その人が作るものが敬意を持って世の中から期待されている、という意味を含んでいます。

そうなると一般的なビジネスとしての写真の仕事はふたつ。付加価値型と記録型です。ここからはややキツ目の話になりますので、定期購読メンバーにだけお伝えします。

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写真の部屋

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。