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サイコロ理論:写真の部屋

前回11月にParisに行ったときの写真の中からセレクトをしていたのですが、その中で展示や写真集に入れてもいいなと思ったのは「たったの一枚」でした。いつもたくさん写真をアップしているじゃないですか、と言われるのですが、それはメモかデッサンのようなものです。カフェに行ってのんびりした、友だちと食事をした、空が綺麗だった、という記録のために撮っています。

しかし、ああこんな写真は二度と撮れないかもしれない、と思えるものは年に何枚もありません。毎日どれほどたくさんシャッターを押していても、です。私はアートディレクターでもあるので、以前は「セレクト」が本業でした。数千枚の中から一枚を選ぶ仕事です。仕事の場合は短期間に同じ状況で撮られた写真から選ぶので、さらに微差を見極めなければいけません。同じロケーション、同じ衣装、同じモデルで撮られた、どこが違うのかわからないくらいの膨大な写真。途方に暮れます。

それと比較すると、日常の写真は同じ場所でそれほど撮りませんから、ここで数カット、ここで数カット、と写っているものからして全部が違います。それらをセレクトして一日に何枚もいい写真が残ることなどあり得ません。

これを『サイコロ理論』と名付けます。

写真を撮ることをサイコロに置き換えて考えてみます。ポイッと投げたサイコロの目が「1」なら成功とします。これは1/6の可能性で成功することになりますね。6回シャッターを切ると1枚いい写真が撮れる。しかし、これは成功の確率ではありません。問題に答えてみてください。これは何の確率ですか。

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写真の部屋

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人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。