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他人の家を覗く:Anizine

インターネット以前の「パソコン通信」に飛びついたアーリーアダプターの多くが、無線の人たちだった。アマチュア無線、CB無線と言われるものは「遠くにいる誰かと繋がれる」というテクニカルな興味が第一にあって、会話の内容にはそれほど重きが置かれていなかった印象がある。

それは電話が発明された時と似ていて、遠くの人と会話ができることを試すだけで十分驚くことができた。ただ、そこにはマニアしかいなかったから、閉じた空間だったことは言うまでもない。

インターネットでソーシャルメディアが普及して起きたことは、スマホと連結したことでまた別の側面を見せ始める。遠くの人と話せることそのものにはすでに何も驚きがなく、「自分と関係のない人々と繋がれる」という新しい要素があらわれた。

アーリーアダプターと呼ばれる人々は、仕組みを理解し、そこにある意義も危険も知っていて始めるから問題はない。でも、どうやらこういうのがあるらしいよ、と言って始める人たちは、「日本刀には鞘が必要である」という大前提を知らないままに、刀を振り回すことになる。免疫のないところに手段だけが与えられるという、かなりまずい状況が生まれた。

たとえば今なら「Clubhouse」になるんだろうけど、「何だかわからないけどみんなやっていて、招待制らしいので誰か招待の権利を売ってください」とツイッターに書いている人がたくさんいる。それに応える「転売」というのも、ソーシャルメディアが生み出した闇の部分であることは言うまでもない。

ソーシャルメディアが悪平等とも言える透明で開放的な世界を作り上げてしまったことで、誰もが他人の家の窓から人の生活を眺める権利を持っていると錯覚してしまっている。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。