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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2022年6月の記事一覧

うやむやに向かう:Anizine

俺がとても苦手な若者の言葉がある。それが流行っているから使うという無自覚な部分も含めて嫌いだ。 それが「ですけど」「みたいな」「かも」のような言葉だ。これらには確実な共通点があるのがすぐにわかると思う。どれも出来事や自分の意見を断定していない。どこかに逃げ道の残る表現なのだ。これをクソジジイが言うならいい。どんなことでも経験則で強引に断定するジジイにこそ、例外の行き先を確保しておいて欲しいと思う。しかし若者は違う。断定しなければ未来はないのだ。 「できればミュージシャンに

誕生日:Anizine

さっき、茂木健一郎さんの誕生日が間違って祝われているツイートを見た。茂木さんの誕生日は10月20日だが、6月20日の今日、お祝いツイートがあったようだ。これで思い出した実験がある。 ある人にはFacebook上で5000人の友人がいた。それはシステムの上限の人数だ。彼女はいたずら心で「今日は誕生日なのです」と書き、ロウソクのついたケーキの写真をアップしたというのだ。

ネットのデリカシー:Anizine

インターネットという場はまだルールが確立されていないという言葉を20年も聞き続けてきた。「ネチケット」なんていうネチネチした印象の言葉も昔はあった。でも、そもそも前提が間違っていて、場のルールなんて存在しない。ソーシャルメディアが描き出すのはその人の「全体」であり、いくら隠そうとしても品性はアクチュアルサイズでスクリーンに映し出される。 現実の社会で本質的な意味で繊細な人が、ネットで傍若無人な振る舞いをすることはあり得ないし、その反対も起こりえない。だからネットという場のル

2年半ぶりのヨーロッパ:Anizine

長かった。 2020年の2月にParisに行って以来、この状況に閉じ込められてきた。まさに拘置所のようだ。小菅が懐かしいなあ。 今年、そろそろ行けるんじゃないかという話になり、ヨーロッパでの10日間のロケを計画した。我々写真家はその場に行かないとどうしようもない。昔、ある知人の先輩デザイナーと話していたとき、丁度刷り上がったという一冊の写真集を見せてくれた。テキサスの荒野が真っ赤な夕日に染まっている表紙。中をパラパラ見てみるとどれもいい写真だった。 「荒野の植物、サボテ