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編集後記『ソフトウェアテスト技法ドリル【第2版】』

 『ソフトウェアテスト技法ドリル』の初版は2010年。あれから12年が経ち、改訂版を世に送り出せてほっとしている。

 秋山浩一さんとの出会いは、『ソフトウェアテストHAYST法入門』(2007年刊行)の企画打合せに遡る。記録を見返すと2006年7月12日に橋渡しをしてくださった立林和夫さんを交えた、著者の吉澤正孝さん、秋山さんとの打合せが最初だ。

 実をいうと記憶では吉澤さんからの持ち込み企画だと思っていたが、記録では立林さんを招いての社内勉強会で紹介されたソフトウェアテストの話が気になり、その後「秋山という優秀な人がいて、技術評論社の『ソフトウェア・テストPRESS Vol.2』にも寄稿している。わかりやすい文章で筆力は十分にある」と太鼓判を押すメールをいただいたことから始まった。まったくもって人の記憶は当てにならない。脱線ついでに言うと、立林さんの『入門タグチメソッド』はバカ売れした。理由はとてもわかりやすいかったからだ。このバカ売れが様々な方面で軋轢を生み出したらしい・・・。

 余談が過ぎてしまった。その企画打合せでの秋山さんの印象は「ボソボソとした話し方だなぁ」という大変失礼なものだった。申し訳ございません。土下座せねばなりません。

 だが『ソフトウェアテスト技法ドリル』を単著で執筆いただいたときに驚異的な才能の持ち主であることを思い知らされた。秋山さんの文章は雄弁だった。秋山さんの凄いところはエンジニアでありながら、文才もあることだろう。こういう方は滅多にお目にかかれない。このような感想をもった理由は、「HAYST法」の編集は後輩Sがやったみたいで、私は企画提案と編集サポート程度の関わりだったためのようだ。

 仕事柄エンジニアの方々の原稿を読むことが多いのだが、何を言いたいのかよくわからない文章にしばしば出くわす。それでも、著者の意図を理解し、読みやすくしたり、わかりやすくする提案をしなければならない。編集者は原稿の内容について専門家とはいえないが、岡目八目で「これおかしいのでは?」という指摘はできる。余談だが、著者から「専門家でもないのに・・・」と言われることがあるが、実際に専門家ではないので内容については理解していない(私の場合)。
 指摘するだけで終わったら編集というプロセスに価値はない(と思っている)。だから、代替案を提案したり、提案できないときは著者に伺って、意図することをはっきりさせ、一緒に代替案をひねり出す。
 秋山さんの原稿は、このプロセスにおける負担が少ない。編集者にとって、とてもありがたい著者なのだ。

 なお、このたびの改訂版でもずいぶん楽して出版に漕ぎ着けることができたことを付記しておく。原稿の完成度が高いのである。それに尽きる。

 秋山先生、浮気せず、当社で執筆してください。(了)

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